シニアだからこその価値

シニアだからこそ価値があるという気づきを得てもらうことも大切です。

実は、戦略的視点から考えればニーズはあるのですが、なかなか企業は若手とは採用目的の異なるミドル・シニア採用に目を向けません。しかし実際、能力面でかなり優秀なミドル・シニアは多いのです。もちろん若手とは違う特性がありますが、社会人としての作法や仕事の仕方など基本的な能力が高く、さらに大手企業で培った経験に基づくノウハウは素晴らしいものがあります。完成度の高い、高度かつ複雑な技術も持っています。しかも大規模な展開ができるのが特徴的です。

スキルだけではありません。〝人物〞という側面から見ても、例えば取引相手などから、若手ではなかなか信頼を得にくい場面は様々あります。ベンチャーキャピタルの投資先などのケースでは、大手企業を相手にする場合にはミドル・シニアのほうが相手先も同世代が多いため、コミュニケーションを行ううえではよいという話も聞きます。様々な場面に対応可能と考えれば、活躍できる機会は多いのです。

あるいは、成長途上の企業はバリューチェーン上厳しいポジションにいることが少なくありません。付加価値を高めるために解決すべき課題がたくさんあるなかで、例えば相手が大企業であった場合に、大企業にいたミドル・シニアであれば、その相手企業に刺さるツボが分かっているなど様々なノウハウを持っているものです。そこを活用できれば、十分に貢献できます。大きい組織にいた経験から、どういう構造にしたら組織がうまくまわるかなど、成長企業にはかなり有益な助言ができ、そのために動くこともできます。

若者のような柔軟性はないかもしれませんが、解決すべき企業課題が明確であれば、それを解決してもらう人材として魅力的といえるのではないでしょうか。

『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』

 

著者名 宮島忠文・小島明子
発行元  日本経済新聞出版
価格 2640円(税込)