MS-Japanの人材紹介サービス「MS Agent」2によれば、50代以降のミドル・シニア世代の希望最低年収の平均値は645万円であることが示されています。分布を見ると、「400万〜599万円」(31・6%)が最も多く、「600万〜799万円」(27・5%)と続いています。年代別では、50〜54歳は640万円、55〜59歳が710万円、60〜64歳で630万円、65歳以上が494万円となっています。
2 MS Agent「シニアの雇用実態レポート2024」
日本全体の給与所得者の平均年収は男性で569万円、女性で316万円3ですので、それと比べると、希望年収は決して低いとはいえません。大企業の人材であるほど中小企業から提示される条件は合わないというのは、データを見ても明らかです。
3 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
採用側にも不安があるのは当たり前
リクルートの調査研究機関であるジョブズリサーチセンター4によれば、企業のシニア採用への意欲は2016年から大きく変わらず、正社員とアルバイト・パートどちらについても、採用に積極的ではない企業が7割弱を占めていることが示されています。
4 ジョブズリサーチセンター「『シニア層の就業実態・意識調査2023』分析レポート」
その理由としては、「健康不安」や「能力・スキルへの不安」を上回り、「特に理由はない」が最も多くなっていました。人材不足に直面している企業の一部でも、シニアに対して明確な不安がないにもかかわらず、何となく採用を検討していないという結果が得られています。一方、積極的な企業に理由を聞くと、「求める人材像に合っていれば、年齢は関係ないから」が最も高くなっています。
シニアを採用したことがないため、採用の仕方や、採用した後どのように扱ってよいのか、なんとなく分からないという企業が多いのです。
「職業紹介業 高齢者雇用推進ガイドライン(令和5年)」(高齢・障害・求職者雇用支援機構)5によれば、実際にマッチングが成功した際の経緯として、「高齢者ということではじめは躊躇されたが、働きぶりを見てもらったところ採用につながった」「人柄をアピールした」「既存の従業員との年代差に不安を持たれたが、温和な人柄で父母世代として親しみを持たれた」などの例が挙げられています。
5 「職業紹介業における高齢者雇用推進ガイドライン(令和5年)」(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
このように、求職支援の際に、人柄や仕事の仕方などを採用企業に理解してもらうプロセスを経ることで、シニアの採用の不安が減り、採用につながることがあります。