各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三菱UFJ銀行の6月のデータをもとに解説。

三菱UFJ銀行の投信売れ筋ランキングの2025年6月は、前月第4位だった「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」がトップにジャンプアップし、前月トップだった「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」が第5位に落ちた。第2位は前月と同じ「eMAXIS 日経225インデックス」だったが、第3位には前月第5位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」が浮上し、第4位には前月第6位だった「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が上がった。また、トップ10圏外から「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」が第8位にランクインした。

 

◆「日経平均」「S&P500」インデックス人気が急落

三菱UFJ銀行の売れ筋ランキングで前月はトップだった「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」が第5位にまでランクを落とした。同様に、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」も前月の第3位から第7位にランクを落としている。これに対し、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は第6位から第4位にランクアップした。この3本は日米を代表する株価指数と全世界株式に投資する株価指数の代表的なインデックスに連動するファンドだが、なぜ、1カ月間でこれほど評価が変わってしまったのだろうか?

この3ファンドについて、2025年のパフォーマンスを振り返ると、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が4月のトランプ関税ショックで大きな下落場面があった関係で、他の2ファンドと比較して見劣りする動きになっているが、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、ほぼ同じような動きを続けており、基準価額の推移だけでは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」だけが高く評価される理由はわからない。

あえて、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の優位性をあげるとすれば「全世界の株式に分散投資している」という分散効果だろう。年初からの動きでは、前年に引き続いて米国株式は史上最高値を更新する堅調さを保っているが、ここに加えて欧州株式も英「FTSE100」やドイツ「DAX」なども史上最高値に進んでいる。中国株やインド株など新興国株もしっかりした値動きをしている。2024年までのように米国株式が突出して優れて値上がりしているという状況とは変わってきている。昨年まで独歩高だった米国株式には「割高」という指摘もあった。2025年になって欧州や新興国の株高があるのは、米国株式には警戒感が高まってきたことから、米国以外の国に資金が回っていったという側面もあるだろう。

このようなリスク管理の側面から見ると、日本だけに特化した「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」や米国だけの「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」よりも、日本にも米国にも投資し、加えて、欧州・新興国にも投資する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が魅力的な投資対象に見えてくる。6月のランキングに影響を与えた投資家心理のひとつだろう。