銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア
業績の前に、まずは事業内容を解説します。
三菱マテリアルは銅や金といった非鉄金属の大手です。1871年に三菱が炭鉱部門に進出し、1873年に吉岡鉱山(岡山県高梁市、1972年に閉山)の買収から金属鉱山事業へ乗り出します。戦後は金属部門が分離したものの、1990年に再び合流し、三菱マテリアルへ社名を変更しました。
主な事業は電気銅の生産です。銅鉱石を輸入し、国内の精錬所で純度99.99%以上の電気銅を生産します。また、鉱山への投資も事業範囲です。チリやカナダで権益を取得し、銅鉱石の安定調達に取り組んでいます。また、銅鉱山への投資に伴う配当収入は業績に比較的大きな影響を与えます。
銅の原料としては、廃棄された家電や電子基盤といった、いわゆる「都市鉱山」も活用されます。三菱マテリアルは、家電や基盤のリサイクル量は世界最大級です。また、銅以外では、金や銀なども生産しており、個人向けに金や銀の投資サービス「マイ・ゴールドパートナー」も手掛けています。
素材だけでなく、加工品でも大きな事業規模を持ちます。三菱マテリアルは生産した電気銅の大半を自社で板状や線状の伸銅品に加工しており、国内のシェアはトップクラスです。また、炭化タングステンやコバルトなどから作る超硬工具は国内首位、半導体向けのはんだ材は世界首位の座を占めています。
【セグメント情報(2025年3月期)】
一方、近年は事業の見直しにも積極的です。三菱マテリアルは、21年3月期から事業ポートフォリオの改革を開始しており、事業の選別が進んでいます。
例えば、アルミニウム事業からは22年に撤退したほか、多結晶シリコン事業は23年にSUMCOに売却しました。またセメント事業も、UBE(旧・宇部興産)と設立したUBE三菱セメントに承継させることで分離します。UBE三菱セメントは持分法適用会社としてグループに属していますが、同社は新規上場の準備に入ったことを明らかにしており、今後の貢献は縮小する見込みです。