義母が激怒した理由
土曜の朝、茶の間のテレビを眺めながら、義母は憤っていた。
「まったく、若い子はいい加減なんだから」
今朝は味噌汁の味も薄すぎるとも、漬物がしょっぱすぎるとも言わなかったかわりに、別の愚痴が家の中を支配していた。
「まあまあ、あの子も向こうで頑張ってるんですから」
精一杯明るい調子で返したが、義母の表情は険しいままだった。
今週末は、本当なら家族4人で外食に行く予定だった。東京へ出ていった悠斗が、久しぶりに顔を見せるというので、義母は数日前から張り切っていた。
「焼肉がいいわね」「あのお店は接客が悪いから却下よ」
そんなふうにあれこれ言いながら店を選んでいた義母の嬉しそうな姿を見るのは、正直久しぶりだった。
しかし昨夜、電話が鳴った。
「ごめん、急にバイト代わってって頼まれちゃって。悪いんだけど、今回はやめとく」
申し訳なさそうな息子の声に、晴子は「残念だけど仕方ないわね」と返したが、すぐに肩越しに義母の視線を感じた。受話器を置いた後、「あんたがちゃんと育てなかったからよ」と吐き捨てるように言われ、何も言えなかった。せっかくだから3人で外食をしようという結論に達したものの、義母の機嫌は直らなかった。