日本も金利上昇の局面に入ってきた

では、これから先も利上げは行われるのだろうか。

米国は2022年に4回連続で0.75%ずつ政策金利を引き上げ、ピーク時には5%まで到達した。それと同じようなペースで日本も利上げができるかというと、技術的にはできる。ただし株価に与えるインパクトや国民からの反発などを考慮すると、いわゆる“政治的に無理”という判断になり、緩やかな利上げが唯一の答えとなる。植田日銀総裁としては自身の任期すべて使って、時間をかけながら目標とする金利まで上昇させることを考えているのではないか。

黒田前総裁がなりふり構わぬ金融緩和によって、日本経済をデフレからの脱却に導いた役割を果たしたとするならば、植田総裁はそれを受けて、金利を正常化させることが課せられたミッションだろう。それはご本人も重々承知しているはずだ。ただ、そのミッションを遂行するためには、同時にさまざまなプレッシャーと戦わなければならないのも事実。時に現状維持バイアスがかかっていることもあろう。

その観点から2024年12月の金融政策決定会合で「もう1ノッチ必要」と言いながらも、まだ1カ月も経過していない段階の2025年1月の同会合において、政策金利を0.50%に引き上げた意味は大きい。さらにトランプ政権など世界経済の不透明感が増すなか、急激な金利上昇にはならないとしても、いよいよ日本も金利上昇の局面に入ってきたと受け止めるべきだろう。

金利上昇は日本のチャンス

 

著者名 中空 麻奈

発行元  ビジネス社

価格 1760円(税込)