不本意非正規雇用者は35万人、無業者は44万人…この人たちにとって支援プログラムは有効なのか
政府は、就職氷河期世代を支援するプログラムの枠組みを策定したわけですが、2024年時点で就職氷河期世代の不本意非正規雇用者は35万人、無業者は44万人にも達しています。果たして、6月3日に政府が発表した就職氷河期世代の支援プログラムは、十分な効果が期待できるでしょうか。
たとえばリ・スキリング支援ということで、「非正規雇用労働者等が働きながら受講しやすいオンラインでの職業訓練」を、2026年度から全国化するそうですが、問題はその職業訓練を受けることによって、どのようなスキルを向上できるのか、ということです。ざっと見たところ「WEBクリエーター」、「ソフトウェア開発」、「経理事務」、「営業事務」となっていますが、55歳の非正規雇用者がいきなりこの手のリ・スキリングを行ったところで、企業は正規雇用するでしょうか。
どうやら国家公務員や地方公務員、教員を、就職氷河期世代から積極的に採用するという施策もあるようですが、これもどうも的外れです。たとえば教員については、「多様な背景や専門性を持つ人材の教員への入職を円滑化する」とありますが、多様な背景や専門性を持つ人材は、就職氷河期世代でもおそらくすでに仕事ができているでしょう。
最大の問題は、何のスキルも持たず、働く意欲も持てないまま中高年に突入している就職氷河期世代の人たちが、どうすれば決して短くない残りの人生を、自分の手で稼いで自活できるようにするかを考えることです。
今回の支援プログラムで唯一希望が持てるのは、農業、建設業、物流業における雇用です。この三業種は、何といってもこれから人手不足が最も懸念されるところですし、すでに現在、人手不足によって事業継続性に支障を来しています。就職氷河期世代の不本意非正規雇用者35万人と、無業者44万人をこれら3業種の雇用に振り向けられれば、社会課題の解決にもつながります。
最後にひとつ、全く意味が分からないのは、厚生労働省が打ち出している「家計改善支援事業」です。
J-FLECが行う金融リテラシーの向上に向けた講師派遣・セミナー・イベントの開催について、就職氷河期世代を含む中高年層への支援を強化するとのことですが、就職氷河期世代で最も厳しい状況に置かれている不本意非正規雇用者35万人と、無業者44万人にとっては、まず安定した仕事を得て収入を確保することが先決のはずです。金融リテラシーの向上などというのは二の次、三の次であり、この手のことを盛り込んでいる時点で、支援プログラムの底の浅さが見て取れます。