バブル崩壊後、厳しい状況のなか、新卒で就職活動をしなければならなかった「就職氷河期世代」。現在、30代後半から50代前半に当たります。

就職氷河期世代の老後が現実味を帯びるにつれ、社会保障への影響を含め、世間の関心が高まっています。第一生命経済研究所の主席エコノミスト・永濱利廣氏は、「就職氷河期世代を生み、そして一部ではあっても厳しい環境のままにしてきたことが、今日の少子化や長いデフレの一因になったことは事実」と指摘します。

本記事では、永濱氏に豊富なデータをもとに、就職氷河期世代の実態を解説してもらいます。(全4回の2回目)

●第1回:就職氷河期世代を放置したツケが回ってきている…少子化の“歯止めのかからなさ”の実態

※本稿は、永濱利廣著『就職氷河期世代の経済学』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を抜粋・再編集したものです。

上がり続ける税率と増えない収入の間で

雇用が不安定で収入が低いと、どうしても結婚や出産などをためらうことになりがちですが、それは非正規の人たちだけの問題ではありません。就職氷河期世代は社会に出る時も、そして社会に出てからも金銭面で割を食っています。

最近では、大企業を中心に大きく賃金が引き上げられているように報じられていますが、表を見れば分かるように企業規模年齢別で見ると、少なくとも2023年に賃金が一番上がっているのは小企業で、次が中企業です [企業規模別世代別一般労働者賃金(図表30)]。

 

一方、大企業は年齢階層別で見ると、ほぼ上がってはいるのですが、35〜54歳のところ、まさに就職氷河期世代は下がっています。

イメージとしては、大企業はとても大きく賃金が上がっていそうですが、確かに若い世代は上がっていても、人数的なボリュームゾーンではむしろ下がっています。これでは就職氷河期世代はたとえ大企業の正社員であってもたまったものではありません。