高い日本の税負担増
さらにこうした世代に追い打ちをかけるのが、住宅ローンや教育費などの負担であり、増え続ける税負担となります。税負担というと、所得税や消費税などのほか、健康保険や年金などの社会保険料の負担があります。しかし、2010年から2021年までの日本を含むG7諸国の国民負担率を国際比較したグラフ「国民負担率の国際比較」(図表31)で分かるように、他の国が1~4Ptの負担増に留まっているのに対し、日本だけが8Ptも上昇しています。

1つの原因は消費税の引き上げをはじめとした増税ですが、それとは別に社会保険料の負担がじわじわと増えてきて、そもそも増えない収入を削り、就職氷河期世代の生活を厳しいものにしています。
もちろん、誰が一番税金を負担しているかというと、金額的には富裕層ですが、富裕層はたとえば1億円稼いでいて1割負担が増えたとしても、生活にはそれほど大きなダメージを受けませんが、非正規雇用で年収が100万円とか200万円の人にとっての1割や5%は生活にまともに響いてきます。
結局、就職氷河期世代は働き盛りにもかかわらず、賃金は伸びにくく、税負担が増えています。さらに、住宅ローンや教育費の負担もあるということで、そのことが将来への不安につながっているのです。
本来なら、所得控除や社会保険料の減免措置の拡大などができればいいのでしょうが、こうした施策が不十分なままに、収入が伸びにくい中で負担増が続けば、老後の生活資金が十分に確保できないままに、介護の問題や低い年金問題に直面することになるだけに、就職氷河期世代のみならず日本の将来が不安になります。
●第3回は【「アベノミクスで非正規ばかりが増えた」は本当か? 批判する人が見落としている二つのデータ】です。(3月5日に配信予定)
就職氷河期世代の経済学
著者名 永濱利廣
発行元 日本能率協会マネジメントセンター
価格 1,870円(税込)