就職難は引きこもりにもつながった

この、就職も進学もできなかった約3割の人たちは今、どうして生計を立てているのでしょうか。

なかには社会に出ることなく、引きこもりになっている人も少なくないようです。いささか古いデータで恐縮ですが、2018年12月に内閣府が40歳から64歳の5000世帯の男女を対象に行った「生活状況に関する調査」によると、中高年引きこもりの人数のなかで最も多い年齢層が40歳~44歳でしたが、この年齢層の人たちに「初めて引きこもりの状態になった年齢を質問したところ、20歳~24歳と答えた人の回答比が33.3%を占めました。就職氷河期の厳しい就職活動で、就職できないまま社会に出ることを拒絶した人たちが、これだけの割合でいるのです。いわゆる「8050問題」といって、80代の親が50代の引きこもりの子供の面倒を見ている状態です。

また、引きこもりにならなくても、正規社員になれず、非正規社員のまま働き続けている人もいます。

では、正規社員と非正規社員の収入差はどのくらいあるのでしょうか。これは厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」を見れば分かります。就職氷河期の人たちの年齢が42歳から55歳ですが、これに該当する賃金を見ると、次のようになります。ちなみにカッコ内の数字が、非正規社員の平均賃金(月収)になります。

・40~44歳・・・・・・36万6800円(22万2600円)
・45~49歳・・・・・・39万500円(22万7900円)
・50~54歳・・・・・・40万3700円(22万3300円)

上記の数字を比較すると分かりますが、非正規社員の平均賃金は、正社員のそれに比べて圧倒的に安くなっています。賃金水準が低いと、当然のことですが自身の老後に向けた資産形成もうまく進みません。

しかも非正規社員の公的年金制度は、最近でこそ雇用している企業側に、厚生年金への加入が求められるようになりましたが、加入を逃れ続けている中小・零細企業は少なくないでしょうし、加入できるようになったとしても、加入時の年齢が高齢になればなるほど、自身が受給できる年金に反映される金額は知れています。