来週の注目ポイント

最後に来週6月9日週の注目ポイントです。注目は5月の米国の消費者物価指数や生産者物価指数でしょう。ただ、米国のインフレが落ち着きつつあるという見方は既定路線です。よほど予想に対して、上振れ下振れとならない限り、それほど大きくマーケットを動かさないと思われます(13ページ)。

出所:内田氏

また、FRBは6月7日からブラックアウト期間に入ります。これは、金融政策の当局者が対外的な発言を控える期間を指しており、今回の場合、前々週の土曜日、つまり7日からFOMCの翌日の19日までです。今週のFRB当局者の発言は、不確実性が高く、急いで利下げに動く状況ではないといった趣旨のものばかりでした。これらを踏まえると6月利下げの可能性はほぼゼロでしょう。

そのほかの注目ポイントは関税交渉です。途中経過としていろいろなヘッドラインが出てくるでしょう。今週も米中首脳が電話会談をするのではないかと報道され多少、緊張が和らぎ、ドル円が下げ止まり、実際の会談が持たれるとドル円相場も144円台まで上昇しています。

この為、来週も関税交渉に関して楽観論が出てくればドル高要因に、逆に悲観的な見方が出てくればドル安要因になると考えられます。

また、今週のドル円の動きを見ていて、円ロングの手仕舞いが進む可能性もあると感じました。今週は、例えばトランプ大統領が「中国が米国との約束を破った」とSNSに投稿したり、鉄鋼やアルミニウム製品への関税を引き上げるなど、リスク回避を煽るような悪い材料がみられましたし、経済指標も雇用統計を除けば、総じて悪いものが続きました。

そういう意味では142円を割ってもおかしくなかったかと思いますが、ドル円は底堅かったと言え、その背景に円ロングがかなり積み上がっている影響があると考えられます。

また、一般的に米系ヘッジファンドには「45日ルール」と呼ばれるものがあります。これは、6月末に決算を迎えるヘッジファンドに対し、投資家がポジションの解約などの指示依頼を45日前にあたる5月中旬までに出すというものです。そうした依頼を踏まえて、ヘッジファンドは6月の中旬ぐらいにかけてポジションの操作や手仕舞いなどを行います。現状ではかなり円ロングが積み上がっていますから、ポジションの手仕舞いは円の売り圧力に結び付く可能性があります。

一方、例えばドイツ株が続伸したり、ユーロドルが1.15を上抜けすれば本格的なユーロ高とドル安に波及します。この為、ユーロドルや欧州株の中でも、特にドイツ株に注目です。

もっとも、仮にドルが一段安になったとしても、円も依然としてかなり弱いままですから、ドル円はそこまでドル安方向に引っ張られずに済むのではないかと考えられます。即ち、ユーロドルとユーロ円が同程度上昇し、ドル円は身動きがとれないといった状況です。

 

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