ユーロなど欧州通貨に比べ、円は依然として冴えません。2025年の年初を100としてドル円やクロス円の動きを図で示すと確かにドル円は92ぐらいと年始比で8%ほどドル安円高になっています。
しかし、スウェーデンクローナ円やスイスフラン円、ユーロ円はいずれも年初よりも円安になっています。ポンド円も99.5近辺と、あとわずかで年初の水準を回復します。また、USMCAに対する関税の影響から、比較的ダメージが大きいとされるカナダドル円も97近辺と、年初比で3%ほどカナダドル安円高になっているに過ぎません。
関税を受け、リスク回避の円買いと叫ばれ、投機筋の円ロングが史上空前の規模にまで積みあがっているにも関わらず、全体としてみれば円安気味です。したがって、8%ほどドル安円高になっているドル円相場もメインドライバーはドル安であり、決して円が強くなってドル円が下がったわけではないのです(12ページ)。

円がなかなか強くなれない要因は、かねてお伝えしている通り、表面的に見えている名目金利からインフレ率を引いた残りの実質金利が大幅なマイナス圏にあることです。このマイナス幅が縮小しない限り、持続的な円高とはなりにくいでしょう。