FWB度が高い人の特徴

一方、「年収が低いのにFWB度が高い人」の特徴は、【図表1】の右側のデータに表れています。

①学ぶ:金融教育を受けた経験があると答えた人が相対的に多い。
②把握する:1カ月の収支を把握できている人が多く、ライフプランを立てている人が約半数と相当多い。自分の受け取る公的年金の受給水準をイメージできている人が半数を超えている。
③相談する:将来設計に外部知見を活用している人が相対的に多め。
④行動する:一時的に収入が減少する場合に備えて、生活資金を準備できている人が約6割にのぼる

特に「年収が低くてもFWB度が高い人」は、家計の「把握」ステップに長けている人が多そうです。例えば、ライフプランを立てている人は47.6%と、FWB度が高くない層に比べ顕著に高くなっています。これは収入が限られていても、将来の見通しを描き、計画的な家計管理に取り組んでいることで、「この生活水準なら何とかやっていける」という安心感を持っているものと推察されます。

また、「収入減少に備えた準備がある」割合も58.6%と6割近くあります。将来に向けた〝グッドタイム〟だけでなく〝バッドタイム〟も想定し、家計のレジリエンス(頑丈さ)を考えた準備行動をとっていると思われます。

FWBは、単に資産や収入の客観水準を上げることのみで高まると思われる方もいるかもしれません。しかし調査データには、年収が多いにも関わらずFWBを感じていない人、逆に年収が低くてもFWBを感じている人の金融行動の特徴があらわれています。FWB度を向上させるためのチェックポイントとして、有効であると考えます。

(筆者:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員 清永 遼太郎)