2022年11月に内閣府が「資産所得倍増プラン」を発表してから2年がたちました。2024年1月には少額投資非課税制度(NISA)が拡充され、多くの人が利用するようになっています。4月には国民への金融経済教育の普及させるため金融経済教育推進機構(J-FLEC)が発足し、本格的に活動を始めました。同機構のミッションには「(国民)一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイングの実現」がうたわれています。
ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)の重要性
ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being、以下FWB)を、J-FLECは「自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態」と定義しています。キーワードは「多様な幸せ」と「安心感」です。
これまでも家計において「金融リテラシーを高めることはよいことだ」という共通認識がありました。日本で金融リテラシーの普及活動は1950年代から始まりました。20世紀後半までの日本のライフスタイルは今ほど多様化しておらず、「学ぶ-働く-老後」といった単線的なライフプランが一般的で、社会保障制度もモデル世帯(勤労者・既婚・片働き・2人世帯)を基準に設計されていました。
老後生活は公的年金に任せ、現役時代のライフイベント(住居、教育など)の費用準備は勤務先の福利厚生制度などに加入していれば「万事オーライ」だった時代です。金融リテラシーも経済に関する知識や金融商品・サービスについての情報を得ることで十分でした。