都市鉱山とリサイクルで資源を国内循環させる「サーキュラーエコノミー」の可能性

米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を行い、イランがホルムズ海峡の封鎖を宣言したことで、国際原油価格は急騰し、日本のエネルギー調達は一気に危機的な局面を迎えました。日本の輸入原油の90%以上は中東産であり、ほぼ全量がホルムズ海峡を経由しています。また一方では、電気自動車や半導体に不可欠なレアアースは世界生産量のかなりの部分を中国が占めており、近年の米中対立や日中関係の悪化から、その供給リスクも広く認識されています。こうした情勢の中で、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の価値に改めて注目が集まるのではないかと考えています。

サーキュラーエコノミーとは、製品や素材を使い捨てにせず、できる限り長く使い続け、使用済みになった後も再利用・再資源化によって価値を循環させる経済モデルのことです。従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」という一方通行の経済(いわゆるリニアエコノミー)とは対照的な概念で、欧州を中心に政策や企業戦略の柱として急速に浸透しています。一般的には、温室効果ガス(GHG)の排出削減や海洋プラスチック問題などといった環境負荷の低減という文脈で語られることが多いかと思いますが、特に日本社会においては、それ以上に資源安全保障の価値が大きいかもしれません。

サーキュラーエコノミーが資源安全保障に直結する最大の理由は、「輸入しなければならない量そのものを減らせる」点にあると考えます。たとえば、使用済みの電気自動車や家電製品からレアアースを回収・精製する「都市鉱山」の活用は、その典型例です。日本にはレアアースの回収技術を有する企業も多いことから、リサイクルによって国内で資源を循環させることができれば、中国への依存度を低下させながら、安定した供給基盤を自ら構築することに繋がるはずです。直近では、南鳥島沖のレアアース泥が注目され、期待が高まっていますが、コストや海洋生態系への影響など、クリアしなければならない課題は残されていますので、まずは既に社会のなかに存在している資源を有効活用するために、今よりももっとできることがあるのではないか、ということを考えてみても良いのではないでしょうか。

同じことは、石油・天然ガスについても言えると思います。日本社会は、過去に何度も石油危機を経験してきたものの、喉元過ぎれば熱さを忘れてしまい、結果的に中東産エネルギーへの依存度の高さは変わらないまま現在に至っています。再生可能エネルギーには、単なる環境負荷の低減だけでなく、安定的なエネルギー供給体制の構築という意味合いもあることをいま一度認識し直す必要があると思いますし、リサイクルについて言えば、スーパーの店頭で回収されたものを再生利用するというチェーンが確立されている食品トレーのように、ひとつひとつの取り組みは小さくても、社会全体で積み重なれば、輸入資源への依存度を着実に低下させることができるはずです。

もちろん、サーキュラーエコノミーだけですべての資源問題が解決するわけではありません。調達先の多角化や国内資源の開発、備蓄体制の強化といった取り組みも並行して進める必要があります。しかし、資源の循環利用は、環境・経済・安全保障という三つの課題を同時に前進させることができる数少ないアプローチのひとつです。企業にとっても原材料コストの低減や供給安定化というメリットがあり、官民が一体となって取り組む動機が揃っています。

今般のホルムズ海峡封鎖という事態が示したように、ひとつのチョークポイントの閉鎖が日本の経済全体を揺るがしかねない現実を前にすると、「外から買う資源を減らし、中で回す資源を増やす」ことの重要性が改めて認識され、サーキュラーエコノミーの価値にスポットライトが当たる局面が来ているのではないかと感じていますし、そうあって欲しいと願っています。