ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being、以下FWB)は「自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることにより、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られる状態」と定義されます。簡単に言うと、「ファイナンシャル」は「お金に関する」という意味ですが、「ウェルビーイング」とは何でしょうか。
一般には「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること」を意味します。米調査会社ギャラップ社によると、ウェルビーイングは健康、コミュニティ、人間関係、キャリアなどの概念で構成されており、お金に関するウェルビーイング(FWB)もその中の1つです。
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家計におけるFWBの実現
家計におけるFWBのイメージはどのようなものでしょうか。ミライ研では「将来のライフイベントを適切に把握し、賢い意思決定によりお金に関する不安を解消し、未来に向けて自律的に行動できる状態」と考えています。FWBが家計の満足度だとすれば、年収や資産が増えれば実現できそうに思われるかもしれませんが、単にお金が多ければよいというわけではありません。
日本版Well-being Initiativeという組織が、「現在のウェルビーイング」と「5年後のウェルビーイング」についての相関関係と影響要因について調査しています(2022年度)。それによると、自分の現在と5年後の生活のウェルビーイング状態を評価する際に最大の要因となったのは、「所得に対する主観的感情(自分が自分の所得に対してどれくらい満足しているか)」でした。一方で、「(自分の)客観的な所得水準」はそれほど重要ではないことが分かりました(図表1)。
【図表1】現在と5年後の生活満足度への影響要因(影響度によるランキング)
この結果は、自分の生活水準などに照らして、現在の所得や将来の所得が満足かどうかが、ウェルビーイング度全体に影響していることを示しています。
例えば、家計収入が多くなったからといって、その分ぜいたくをして生活水準を上げてしまえば家計支出も増え、家計にとってかえってマイナスになるかもしれません。一方で、資産や所得の多寡に関係なく、「この水準なら暮らしていけそうだ」という感覚を持てていれば、家計の不安なく生活できるでしょう。このように、FWBは生活者本人の「主観(自分自身の感じ方、受け止め方)」によって大きく満足度が変化します。