FWB向上のための金融リテラシー
ミライ研では、金融に関する情報や知識を習得し、それを効果的に自分の家計に応用するスキルまでを含めて「金融リテラシー」と位置づけています。金融リテラシーを活用し、家計において実際の金融行動に踏み出すことがFWB向上の鍵になると考えています。
具体的には、金融知識を習得したうえで(①学ぶ)、自分ごととして我が家の収支把握やライフデザインに取り組む(②把握)、必要に応じて信頼できる専門家(金融機関、ファイナンシャル・プランナー、ファイナンシャル・アドバイザーなど)に悩みや疑問を投げかけて解消し(③相談)、実際に家計管理や資産形成などに取り組む(④行動)、という4つのステップをイメージしています。
例えば、「①学ぶ」の中で重要な経験である「金融教育」の受講経験をFWB度別に見てみましょう。本人の年収が700万円以上のグループ1,019人に対して、金融教育の受講経験の有無を尋ねたところ、FWB度の低い人は高い人に比べて、「金融教育を受けたことはない」の回答割合が多くなっていました(図表2)。
【図表2】金融教育の受講経験(年収700万円以上)
「ファイナンシャル・ウェルビーイングと金融リテラシーに関する意識と実態調査」(2024年)
金融教育の受講経験以外にも、「FWB向上にむけた4つのステップ」の観点から、年収区分別に「FWBの高い人」と「FWBの低い人」の特徴を分析しています。
一例として、「年収700万円以上のグループの中で、FWB度が低い人はどんな人か」をアンケート調査結果からイメージしたところ、以下のような特徴が浮かび上がってきました。
①学ぶ:金融教育を受けた経験がない人が相対的に多い
②把握する:1か月の収支を把握していない人が相対的に多い、ライフプランを立てていない人が多い、公的年金の水準感をイメージできていない人が多い
③相談する:将来設計に外部知見を活用している人が相対的に少ない
④行動する:一時的に収入が減少する場合に備えて、生活資金を準備できていない人が多い
こういった点を踏まえ、ミライ研では、FWBを高める4つのステップにおける典型的な6つの金融行動の取り組み状況と、FWB度についてのクロス分析を行っています。6つの行動は、金融教育の受講経験の有無、家計収支の把握状況、ライフプランの策定有無、自身の公的年金支給額についてのイメージの有無、外部知見の活用状況、万一収入が減少したときの備えの有無としています。次回【同じ年収でも差が生まれる“経済面の満足度”、お金のウェルビーイングを実現できている人の共通点とは?】はこの結果について解説いたします。
(筆者:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員 清永 遼太郎)