SNSには「お米は高いから、主食をパンにする」の声も…この考えは妥当なのか
とはいうものの、本当にお米の値段だけが上がったのでしょうか。「パンの値段はそれほど上がっていないから、お米からパンに主食を変えるしかない」といった消費者の声が、ニュースなどで紹介されますが、本当にパンの値段は、お米よりも安いのでしょうか。
消費者物価指数の品目別価格指数で、うるち米の他、食パン、スパゲッティ、茹でうどんの価格動向を比較してみました。統計をとり始めた時期が異なるので、全部の統計が揃う1985年1月の数値をそれぞれ100として計算し直しています。それらが2025年3月までの40年と2カ月間で、どのように変化したのかを見てみましょう。
うるち米・・・・・・167.80
食パン・・・・・・155.11
スパゲッティ・・・・・・145.21
茹でうどん・・・・・・158.98
このように見ると、お米の値段だけが突出して値上がりしているわけではないことが分かります。主食の値段が押しなべて上昇しているのです。
もっと言うと、お米の値段は1990年代に入ってから2015年4月まで、長期的に下落傾向をたどってきました。1985年1月を100としたうるち米の価格は、2015年4月時点で77.02まで下落しています。この間、他の主食の価格は上昇し続けており、それぞれの価格は以下のようになります。
うるち米・・・・・・77.02
食パン・・・・・・118.86
スパゲッティ・・・・・・120.61
茹でうどん・・・・・・119.58
2015年4月時点においては、実は他の主食の方が、お米よりもはるかに高かったのです。その傾向は直近まで続いていて、2024年4月時点では、
うるち米・・・・・・87.73
食パン・・・・・・148.30
スパゲッティ・・・・・・144.24
茹でうどん・・・・・・155.36
でした。食パンの方が、お米よりもはるかに高かったのです。それもわずか1年ほど前の話です。お米の価格が、他の主食のなかで最も高くなったのは2025年3月ですから、この数カ月の値上がりが異常だったことになります。
確かに、ここ数カ月でお米の価格が急騰しため、私たちはこれを「異常事態」と捉えがちですが、長期的な視点で考えると、今の価格はそれほど異常ではないとも言えます。
1975年1月の品目別価格指数を見ると「うるち米a」は69.1でした。それが2025年3月には192.8ですから、この50年間で価格は2.8倍になっています。
計算がややこしくなるので、半端な2カ月分はネグりますが、1年複利計算で50年間を運用し、元本が2.8倍になるために必要な年利回りが何%かを計算すると、年2.43%になります。
現在、政府・日銀が掲げている物価目標は年2%ですから、年2.43%ずつ上昇するお米の値段は、まあまあ許容できる範囲です。
もちろん今回の上昇は、短期間での急騰なので、ある程度の調整はあるでしょう。ただ、デフレからインフレに世の中が移行していくのだとしたら、長期的にお米の値段はさらに上昇すると考えるべきだし、それに備えるためにも、インフレ率を上回る運用が必要になるのです。