株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
T:4月13日に大阪・関西万博が開幕しました。158カ国・地域と7国際機関が参加し、国内外から多くの来場者で賑わっているようです。
神様:報道やSNSなどで盛り上がっているのを目の当たりにすると、Tさんも行ってみたくなったのではないですか?
T:もちろんです。近いうちに家族で行きたいですね。
神様:さて、今回の万博で大きな注目ポイントの一つとなっているのが、会場内での支払い手段ではないでしょうか。
T:国際博覧会として初の試みとなる「全面的キャッシュレス」の導入ですね。会場内で現金が使えないことに戸惑うかもしれませんが、なんだか少し先の未来を体感するようでワクワクしますね。
神様:現代ではすでに多くの人々がキャッシュレスの便利さを体験しています。経済産業省は3月31日、2024年の個人消費に占めるキャッシュレス決済比率を発表しました。2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%となり、政府の目標であった「2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすること」を前倒しで達成しました。金額ベースで見ると実に141兆円です。
T:日本のキャッシュレスも大きく進展しているようで、すばらしいですね。
神様:しかし、国際比較で見ると日本はいまだキャッシュレス後進国です。一般社団法人キャッシュレス推進協議会が公表した2022年の世界主要国におけるキャッシュレス決済比率を見ると、トップは韓国で99%がキャッシュレス決済です。その次に中国で83.5%、さらにオーストラリアが75.9%と続きます。英国、米国やフランスも50%以上です。
T:なぜ日本では現金での決済が多いのでしょうか?
神様:キャッシュレス決済のメリットを考えてみましょう。現金を持ち歩かないことで、スリや盗難に遭うリスクが減ります。支払いも円滑に行うことができ、おつりをもらう手間も省くことができます。
T:日本は海外に比べると安心して現金を持ち歩くことができる国ですよね。偽札も少ないと言います。安心して現金で買い物ができるため、キャッシュレスが進んでいなかったのなら複雑な心境です。
神様:日本では、お店のレジが正確でスムーズに支払いが行えますし、街中にATMも多数あります。お財布を落としてしまっても帰ってくるほど治安も良い。特に現金での決済に困っていなかったのです。しかし、キャッシュレス決済のメリットとして、支払い履歴が残りお金の管理がしやすいことがあります。現金の計算や管理はとても煩雑で、数え間違いも多いものです。キャッシュレス化で手間が省けることでしょう。
T:ポイントなどの特典が付くことも、現金には無い大きなメリットですよね。
神様:店舗側にとっても多くのメリットがあります。レジ業務や経理業務の効率化、現金の管理コスト負担軽減、利便性の向上に伴う集客拡大などです。少子高齢化が進む中、生産性の向上に貢献する手段でもあります。政府は2018年に「キャッシュレス・ビジョン」を策定し、日本のキャッシュレス決済の方向性を決め推進してきました。実は、大阪・関西万博はこのビジョンの中で、キャッシュレス決済比率40%を達成する目標と定められていました。今後、日本が世界最高水準のキャッシュレス決済比率80%を目指すことも明記されています。
T:万博は、日本にとってキャッシュレス決済を力強く推進していくための一つの目標であり、中間点だったわけですね。
神様:今後さらに推進していくためには、現在乱立している決済サービスの簡素化や標準化も鍵を握るでしょう。政府は2030年に訪日外国人旅行者数を6,000万人に、インバウンド消費額を15兆円とする政策目標を掲げています。その受入体制の整備として、キャッシュレス環境の改善を進める方針です。日本のキャッシュレス決済サービスは今後さらに便利になっていきます。関連企業にとっては大きな商機となるでしょう。