株式や投資信託にどれほどの残高があるのか
恐らく、このコラムを読んで多くの人が気にしているのは、株式や投資信託など投資性商品の残高がどうなっているのか、ということでしょう。現金・預金と同様、投資性商品の総額と、前年同月比を見てみましょう。
株式等・・・・・・298兆698億円(9.50%)
投資信託受益証券・・・・・・135兆6895億円(27.35%)
両者とも順調に増えています。なかでも投資信託はこの1年間で、残高が27.35%も増えました。これは2024年1月からNISAの制度が見直され、生涯非課税枠が大きく拡大したからと考えられます。
ただ、この数字を見るうえでひとつだけ注意点があります。それは、ここに掲載されている残高は時価評価されたものであることです。株式にしても投資信託にしても、価格が常に変動しています。
そのため、一定の計測期間中に株価などが大きく値上がりすると評価益の影響によって残高が増えたように見えてしまうという問題点があります。逆に株価などが大きく値下がりしたら、評価損の影響によって残高が減ったように見えるのです。
こうした価格変動商品の資金流出入状況を把握するためには、計測期間中の残高の増減から価格変動による影響を取り除く必要があります。そのための数値が「調整値」です。調整値は、資金循環統計でも、「対象とする期間の残高の差額と取引額(フロー)の間の乖離額」などと定義されていますが、要するに価格変化などによる変動額であると認識しておけば良いでしょう。
たとえば2023年12月末から2024年12月末までの1年間で、株式等と投資信託受益証券の残高がいくら増えたのかを計算すると、以下のようになります。
株式等・・・・・・25兆8764億円
投資信託受益証券・・・・・・29兆1439億円
これは価格変動も含めた残高の増減を示す数字なので、ここから調整分を加減しなければなりません。この1年間における調整額がいくらだったのかを計算してみましょう。
株式等・・・・・・28兆868億円
投資信託受益証券・・・・・・17兆5793億円
このように、残高と調整額を比較すると、評価益ではなく実数としてどの程度の資金が流入したのかを把握できます。
株式の場合、残高は25兆8764億円増えましたが、そのうち評価益が28兆868億円ですから、この1年間の残高増は、それを超えて評価益が増えたからと考えることができます。つまり、実数で言えば資金は流出したことになります。
一方、投資信託受益証券はどうだったのかというと、残高は29兆1439億円増ですが、このうち評価益は17兆5793億円ですから、純粋に資金が流入して残高増につながったことが分かります。
要するに、投資信託受益証券は資金が流入しているけれども、株式等からは資金が流出していることが、残高と調整額の比較から分かります。表面上の数字にとらわれないようにしてください。