資産運用など金融に関するアドバイスの新たな担い手として、存在感を増しているIFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)。前回の記事でもご紹介した通り、最近は大手金融機関という安定した職場を捨て、IFAへと転身する人が増えてきています。
今回も有力IFA法人であるFanのご協力のもと、現役IFAの生の声を紹介したいと思います。
「顧客に寄り添った提案ができない」金融機関の現実
まずは前回の室田さんと同じく、以前は準大手証券会社に勤務し、今年1月にFanに入社したというAさん。IFAに転身した理由を、「当社が目指す金融リテラシーの向上という理念に共感するとともに、顧客に寄り添った提案ができると思ったから」と話します。
逆に言えば、証券会社では「顧客に寄り添った提案ができない」ことになりますが、背景には室田さんも指摘していた日本の金融機関の体質があるようです。Aさんも約5年半、リテール営業を担当していたそうですが、「顧客に対して金融商品を販売する際、顧客重視ではなく、会社の収益重視になっているところが多く、会社都合の商品の販売が横行していると感じました」と振り返ります。
もちろん、ここ数年は金融庁が「顧客本位の業務運営」を掲げて改革を促してきたこともあり、既存の金融機関の営業スタイルが変化してきているのも事実。しかし、今はまだ過渡期と言え、変革にはそれなりの時間がかかるのも確かでしょう。
「証券会社に勤めていて、私自身、顧客の資産の拡大ではなく、いかに手数料が高い商品を顧客に販売するかにフォーカスした営業を行っていました。売りたくもない商品を販売したり、会社のノルマがある商品をお客さまに販売したりして手数料をいただくことに、抵抗がなかったわけではありませんが、自分の提案の本質的価値、証券会社の本質的価値が見えにくい状況になってしまっていたのです」。
そうしたジレンマを抱える中で、転職を決意したAさん。「IFAという職業に挑戦しようと思ったのは、転勤がなく一生お客さまを担当することで質の高い提案ができる上、既存の金融機関に属さないため中立的な立場でアドバイスができる。本当の意味での『顧客本位』の提案ができると考えたからです」。
今は充実した毎日を送っているそうですが、やはりIFAの知名度の低さは悩みのよう。「日本ではまだ、IFAという言葉自体になじみがないので、まだまだ大手金融機関から金融商品を購入することが多いのは間違いありません。それでも、将来的には米国のようにIFAが浸透する日を信じ、私自身は真の顧客本位の提案ができるよう努めていきたいと考えています」。