「お金に関する相談ならIFA」という文化を作りたい
続いてご登場いただくのは、証券会社ではなく保険会社出身という、日本のIFAではやや珍しいキャリアを持つ谷山泰彦さん。「以前は外資系の生命保険会社に約10年間在籍していましたが、給与面に不満はなく、職場の上司は今でも尊敬していますし、同僚との人間関係も良好でした」。
外資系の生命保険会社と言えば、1000万円を超える年収も全く珍しくない世界。しかも、職場の人間関係も良好だったとのことで、谷山さんがそうした恵まれた環境から、あえて飛び出した理由は何だったのでしょうか?
「転職を考えるようになったのは、生命保険という1種類の金融商品だけではお客さまのお金に関する不安や問題を限定的にしか解決できないことが、まずありました」。
しかも、生命保険という限られた領域で、さらに特定の商品を販売しないと報酬が下がってしまう給与体系でもあったそう。そうした中で、「どうしても商品ありきの提案になってしまう」ことが悩みであり、このあたりの事情は証券会社に近いものがあるかもしれません。
「お客さまの課題を解決することよりも、特定の商品を販売することに目線が向いてしまう。そんな仕事に対して、良心の呵責を感じるようになっていたのです」と谷山さんは振り返ります。
その点、IFAであれば特定の商品に対するノルマはなく、生命保険以外にも証券などの複数の金融商品を取り扱うことができるわけで、「お客さまの利益を一番に考えることができます」と谷山さん。「IFAは総合的なコンサルティングを行えるため、お客さまのニーズに幅広くお応えすることができる。自分の考えるビジネスの理想像だと確信し、この業界に挑戦したのです」。
「IFAこそ自分の理想像」と笑顔で話す谷山さん
IFAという職業の認知度を高めていくことに加え、投資や保険の相談はもちろん、お金全般に関して相談するならIFAが最初の選択肢になる。「そんな文化を日本に作っていきたい」と、谷山さんは今後の抱負を話してくれました。
前回の記事と合わせて、計3名の現役IFAの方にご登場いただき、それぞれその転職理由を話してもらったわけですが、共通しているのは、「本当の意味でお客さまのためになる仕事がしたい」という点。彼らにとって、自らの収入は二の次だとすら言えるのかもしれません。
昨年は郵便局によるかんぽ生命保険の不適切販売問題があったこともあり、金融アドバイザーに向けられる目が厳しくなっているのは否めません。しかし、理想を掲げ、恵まれた環境を捨ててまで、「顧客本位」を貫きたいと考える金融アドバイザーが増えてきているのも事実なのです。
IFAという職業が、そうしたアドバイザーの受け皿になっていることこそが、近年、その存在感が高まってきている一番の理由なのでしょう。もちろん、一口にIFAと言ってもさまざまであり、一方で既存の金融機関のほうでも改革が進んでいることは、最後に付け加えておくべきかもしれません。