◆さまざまに特徴のある新設ファンドが登場
2月の新設ファンドの特徴は、「インド株」など特定の資産に投資するファンドが集中的に設定されるのではなく、さまざまな特徴のあるファンドが幅広く登場していることだ。たとえば、「東海東京ヌビーン・リタイアメントファンド」は資産の取り崩しにポイントを置いたファンドだ。退職金などまとまった資金を保有している人が、「安定的に資産を運用して増やしながら、一定金額を取り崩して老後に受け取る公的年金等に+αで使う」ということを想定しているファンドだ。奇数月の10日に目標分配額である年510円(各決算時85円)相当に応じた分配を行う「年510円目標取崩し型」、また、奇数月の10日に目標分配率の年5%(各決算時0.83%)相当に応じた分配を行う「年5%目標取崩し型」をそろえた。「年510円目標」など定額取り崩しは、定期的に一定額の金額が手に入るために生活費が安定するという効果があるが資金をより早く枯渇させるリスクがある。「年5%目標」などの定率取り崩しは、定期的に手に入る金額がばらつくものの、資金をより長く存続させるという効果が期待できる。どちらを選ぶかは、生活プランの考え方による。
また、「ピクテ・ウォーター・ファンド」は、世界の水関連企業に投資するファンド。「ニッセイ・パワーテクノロジー株式ファンド」は「電力」に関連する優れた技術やビジネスモデルを有する企業の株式に投資するファンド。「イーストスプリング・インド国債ファンド」は、インド国債を投資対象にしたファンド。「楽天・GCIシステマティック・グローバル・アルファ・ファンド」は、GCIグループが開発したグローバルかつ多資産のエクスポージャーを多様に組み合わせたポートフォリオに投資するファンドなど、さまざまな投資資産のみならず、投資手法も工夫した新しいタイプのファンドが出てきている。
2024年1月にスタートした新NISAは、多くの個人投資家に投資のきっかけを与えた。すでに成人の4人に1人はNISA口座を取得して投資信託や株式への投資を始めている。若い人ほど投資への関心は高く、30代は3人に1人がNISA口座を保有していることになる。これほど多くの国民が投資を始めれば、当然、その投資ニーズは幅広くなる。最初は「S&P500」や「全世界株式(オール・カントリー)」に投資している人が多いという実態に合わせてインデックスファンドの積立投資から始めた人の中にも、徐々に、自分自身の価値観や見通しにかなった投資を志向する人が出てくるだろう。
投資には「絶対」がないため、何か正しい投資の手法があるわけではない。正しいといえるものがなければ、「自分の好みにかなう」という納得感や満足度の高い投資を選ぶ人が一定数は現れるものだ。さまざまな特徴のあるファンドが設定されるのは、投資のステージが「最初の一歩」から、次の段階に進もうとしている勢いが感じられる動きだ。
執筆/ライター・記者 徳永 浩