三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2025年2月のトップ4は前月と同様だった。トップに「三井住友・225オープン」、以下は「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」、「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」、「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」の順だった。第5位に前月第7位の「SMBC円資産ファンド」がジャンプアップした。また、トップ10圏外から第8位に「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)<世界のベスト>」が、第9位に「エス・ビー・日本株オープン225」がランクインした。
◆円高で「SMBC円資産ファンド」に資金流入
第5位にジャンプアップした「SMBC円資産ファンド」は為替相場が円高に振れるというこれまでにない動きに対応した新しい選択肢として注目される。同ファンドの投資対象(戦略)は、「日本国債」と「絶対収益型(日本株マーケットニュートラル戦略)」、「日本株式(国内高配当株)」となっている。「国内株式」については、そもそも「高配当株」というディフェンシブな銘柄群を投資対象とすることに加え、先物を使って組み入れ比率を柔軟に見直す仕組みを入れている。株式の価格変動リスクは極力抑えたいという意図が感じられる。投資対象を「円資産」に限定したファンドが売れ筋上位になったのは、これまで続いてきた「円安基調を背景とした外国資産への投資」という流れに、一定の見直しが始まった兆しなのではないだろうか?
ドル円の長期推移は、2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)の折に、米国が先駆けて金融緩和を深く大きく実施した関係で、2011年10月に1ドル=75.32円の史上最高値をつけてからは、その反動ともいえる緩やかな円安が続いた。2012年12月に第2次安倍内閣が誕生して「3本の矢」からなるアベノミクスを唱え、2013年4月に日銀に黒田総裁が就任して「異次元の金融緩和」で「デフレを脱却するまでは強烈な金融緩和姿勢を維持する」と明言してから、何度かの揺り戻し的な円高局面を織り込みながら基調としての円安が続いていた。結果的に2024年7月の1ドル=161.95円という34年ぶりの円安水準まで円が下落することになった。
為替は2011年から実に13年間にわたって円安方向に動き、この間にドルの価値は約2倍化(円の価値は半減)した。この間、日本は「失われた30年」といわれるような停滞した経済が続いてきたため、資産を増やそうと考える投資家は、米国株式をはじめとした外国資産を第1の投資対象とすることが「常識」と考えられてきた。しかし、日本がインフレ(物価上昇)経済に転換し、日銀の金融政策も「異次元緩和」から「正常化」をめざす局面を迎えたことで、過去10年以上にわたって続いた「投資の第1選択肢は外国」という常識が揺らいでいる。三井住友銀行の売れ筋の変化は、そのような大きな流れの転換を感じさせる。