スタグフレーション化への懸念

この分かりにくい動きの要因はなにか。それは今週のマーケットにおける懸念事項が米国経済のスタグフレーション化だったことが挙げられます。

出所:内田氏

スタグフレーションとは景気後退とインフレが同時に起こる状況を指します。通常、景気後退時だと物価は下がり、物価が上昇するときどちらかと言えば景気が良いはずです。ですが、スタグフレーションはいわば「悪いとこ取り」であり、景気は悪いのに物価も上がるという状態を意味します。

今週はスタグフレーションが警戒されていたためマーケットはリスク回避的になり、VIX指数(恐怖指数)が上昇し、株安となって安全資産の債券にお金が流れ、債券高による金利低下という動きとなっていました。

しかし実際にはCPI、PPIともに予想を下回ったため「スタグフレーションにはならない」という安心感から、リスク回避姿勢が緩和。安全資産の米国債がやや売られて価格が下がり、金利が上昇してドルをサポートするという、非常に分かりにくい動きとなりました。

ただ、トランプ関税の影響で先行きは依然不透明です。どんどん金利が上がるという動きにもなっていないのが現状と言えるでしょう。

こちらはVIX指数の過去1年のグラフです。

 

昨年では夏に起こった世界的株安時と、12月に米国が事実上の「利下げ打ち止め」を宣言したときに上昇しました。今週半ば以降にかけて低下しており、現在は約24ポイントです。いまだ高い水準ではあるものの、2月終わりからのVIX指数上昇の動きが少し落ち着きを取り戻してきています。