DCの19年ルールは受け取りの柔軟性があるから

DCは原則60歳※以上75歳未満で受け取りを開始する必要があります。逆にいうと、受給可能年齢から75歳までの間で本人が受け取り時期を決められる柔軟性があります。そのため、55歳以降の退職金と調整する「19年ルール」が設定されています。

退職手当は通常、退職後1カ月以内に支払う等が規定されており、受け取り時期を選ぶことができません。これまでに5年ルールが活用できた人は、退職手当を65歳以降に受け取れる人に限定されていました。このことから、10年ルールに変更されてもそれほど大きな影響がないのではないかと想定されます。

また退職手当以外に、DBからの給付を65歳以降に一時金で受け取る選択をすると、5年ルールが適用されるケースもあったようです(DB規約による)。

B さんのようなケースは65歳定年制が広がるにつれて、今後の増加が予想されました。10年ルールはその変化に税が対応したともいえます。

なお65歳定年制に移行した企業が、企業型DCの資格喪失年齢を60歳のまま変更しないことも可能で、そうした企業は一定数存在します。逆に企業型DCの資格喪失年齢を65歳まで延長すると、60歳時点でDCを受け取ることはできないので、DCを先に受け取って、あとから退職手当を受け取るということはできません。

2024年には退職所得控除の金額見直しが議論されたことがありました。今後とも受取ルールの変更には注視していく必要があるでしょう。

※60歳から受給開始するためには通算加入者等期間が10年以上必要で、加入者でないこと(規約に定める年齢に達して加入資格を喪失した状態となること)が条件。