2025年4月から、65歳までの雇用確保が完全義務化されます。それに呼応して、定年年齢を60歳以上に変更する企業も増えつつあります。60歳は引退年齢ではなく、60歳を超えても普通に働くことが定着してきたといえます。「人生100年時代」であれば、50歳は折り返し地点。50歳超での確定拠出年金(DC)、なかでも個人型DC(iDeCo)の活用法を考えてみます。

iDeCoは何歳まで「加入者」になれる?

iDeCoでは、定期的に掛金を拠出する人を「加入者」、拠出せずに運用だけ行う人を「運用指図者」といいますが、何歳まで加入者を続けられるか、ご存じですか?

2022年5月の法改正で65歳まで引き上げられました(従来は60歳未満に限定)。

iDeCoは公的年金の上乗せ制度としての税の優遇措置が大きいため、利用範囲が限定されています。そのため、iDeCoの加入者になれるのは、公的年金の保険料を負担している間、という制約もあります。結果的に、60歳以上の誰もが無条件に活用できるわけではありませんが、公務員や会社員で厚生年金保険の被保険者であれば、この条件をクリアしています。

つまり公務員・会社員として働く人は、基本的に65歳までiDeCoを続けることができる、といえます。なお、2022年5月の法改正では、加入可能年齢引き上げのほかにもいくつかの改正が行われました。

・60歳以降からDCを始められる。
・60歳以降からDCを始めた場合は、最初の掛金拠出から5年経過すれば受給可能になる。

中高年になると、体調や環境などによって働き方はさまざまに分かれてきます。iDeCoの活用法を具体的なケースごとに考えてみましょう。

ケース1:「50代前半」はiDeCo加入者になるのに遅くない

・52歳7カ月
・自営業(大学卒業後、6年間企業に勤務した後に独立)
・iDeCo手続きをしなければ、と思っている間に50歳を超えてしまった方
〈理由〉自営業者の拠出限度額は大きいため、一定程度、資産の積み上げが可能
〈受給可能年齢〉62歳(60歳までの期間が7年数カ月のため)
〈加入可能期間〉62歳まで=大学時代の国民年金保険料が「みなし期間」になっており、62歳までの任意加入※を選択。その間、iDeCoの掛金拠出も可能
〈拠出限度額〉月額6.8万円

月額6.8万円を10年間、2%で運用できたとすると911万円になります(拠出総額は816万円)。老後資金の一部として50代から準備する金額としては十分といえるのではないでしょうか。

しかも、毎月6.8万円を拠出すると、年間81.6万円が所得税・住民税のかからない金額となり、税の優遇効果は非常に高くなります。また、掛金の拠出期間は退職所得控除の勤続年数として計算できるため、一時金で受け取る場合は400万円(40万円×10年)までは税がかからず、課税対象は400万円を超える金額の2分の1になります。より税メリットを生かすために、たとえば半分を一時金、残りを年金で受け取ることとすれば、公的年金等控除も活用できます。

※国民年金の任意加入:60歳以上65歳で被保険者期間が40年なければ、任意加入が可能。