「年初に一括 VS 積立」問題…投資の原点に立ち返れば「一括」

ただ、そのNISAも積み立てた方が良いのか、それとも一括投資が良いのか、ということで迷っている人は少なくないと思います。

結論から言えば、一括投資が有利です。

それは、なぜ投資をするのかを考えれば、おのずと答えは明確になります。

私たちが投資をするのは、投資対象がいずれ値上がりすると考えているからです。値下がりするのであれば、わざわざ価格変動リスクのある株式や投資信託を買う必要はありません。現金で持っているのが一番でしょう。

でも、私たちは株式や投資信託の価格が値上がりすると信じているからこそ、これらの投資商品を買おうとするのです。だとしたら、できるだけ早いタイミングで、それもある程度まとまった資金で投資する方が、資金効率は着実に良くなります。

「年初に一括 VS 積立」を考える、簡単なシミュレーション

現実にはあり得ないシミュレーションですが、価格が右肩上がりで直線的に上昇する投資信託のケースを想定してみましょう。ある年の初めに投資を始めた時の価格は基準価額1万口1万円(1口1円)で、1年後に1万口1万2400円になったとします。つまり毎月200円ずつ上昇したことになります。

この投資対象に投資元本は同じ120万円でありつつも、120万円を年初に一括で投資した場合と、毎月10万円ずつ12回に分けて投資した場合を比較してみます。

<一括購入>
まず一括投資した場合ですが、120万円が1年後には148万8000円になります。利益は28万8000円です。

<10万円ずつの積立購入>
対して毎月10万円ずつ買い付けた場合はどうでしょうか。

1月:10万円で10万口買い付け(1万口あたり1万円)
2月:10万円で9万8039口買い付け(1万口あたり1万200円)
3月:10万円で9万6153口買い付け(1万口あたり1万400円)
4月:10万円で9万4339口買い付け(1万口あたり1万600円)
……<中略>
12月:10万円で8万1967口買い付け(1万口あたり1万2200円)


(そして、翌年1月に当該投資信託は1万口あたり1万2400円に…)

という具合に1月~12月に月1回の買い付けを続けた結果、トータル108万5292口となります。そして、翌年1月にはその投資信託は1万口あたり1万2400円に上がっている設定ですので、評価額は1.24×108万5292口=134万5763円です。つまり、投資元本120万円に対し、利益は14万5763円となります。

結果として、一括のほうが、毎月積立よりも14万円超上回り、およそ2倍の利益が出ています。

確かに定額積立投資は、ドルコスト平均法の時間分散効果によって、一見すると有利に見えるのですが、実は一直線に値上がりするマーケットでは、むしろ最初にまとまった金額で一括投資した方が有利になるのです。

前述したように、そもそも資産形成は投資対象が今後、値上がりすることが前提になります。もちろん、投資には値下がりしても利益を得る方法はあります。株式投資で言えば、信用取引の売り建てがそうですし、株価指数先物取引の売り建て、プットオプションの買いなどを駆使すれば、マーケットの下落局面でも利益を得ることは可能です。

しかし、これらの方法は資産形成というよりも、値下がりに乗じて利益を得る「投機」に近い取引になります。当然、NISA口座を用いてこの手の取引はできませんし、これからNISAを活用して資産形成を始めようという人に、この手の取引を勧めるわけにはいきません。