2025年の世界経済の見通し――カギを握るトランプ政権の政策の優先順位
――25年の世界経済および債券市場をどうみますか。
まず、米国経済の基本的なシナリオは高成長の継続です。足元の経済指標をみる限り、財政の景気刺激効果は続いており、経済が底堅く推移する中、インフレ率は緩やかに下落していくというのがベースケースになります。
――米国経済のリスクとしてはどんなことが想定されますか。
堅調な実体経済の一方で、インフレ再燃と財政赤字拡大の不確実性には注視が必要です。具体的には、第2期トランプ政権の政策が、どういう順番で実施されるのか、これが重要なポイントです。例えば移民対策や関税強化を先行させ、インフレ再燃の可能性が強くなった場合、FRBが金融緩和をストップする事態も考えられます。それが米国の経済成長を下押し、最悪のケースではリセッションを招く可能性があります。
トランプ次期大統領の政策には、経済成長を促す政策もありますが、そうした政策が効果を発揮する前に、移民対策や関税強化が行われるとリセッションに陥る可能性も出てくる。こうしたリスクは、まだマーケットには十分理解されてはいません。
――米国のみならず、グローバル経済にも影響が及びそうですね。
規制緩和や減税が先か、あるいは移民対策や関税強化が先かによって、グローバル経済への影響も違ってきます。
現状、欧州経済は減速方向の半面、日本は上向き、そして新興国は堅調という見方をしています。一方で、米国の関税政策が早期に実施された場合、最も影響を受けるのは欧州経済です。関税の内容によっては景気後退につながりかねません。中国経済にも大きな影響はありますが、中国政府が25年3月に公表すると見られる経済刺激策の内容をみて動向を判断することになるでしょう。
――米国経済のメインシナリオは高成長だが、政策の順番次第でリセッションの可能性もある…となると、25年はいつにも増して不透明感が強いですね。
トランプ政権の発足後、最初の100日間、いわゆるハネムーン期間はおそらく米国経済の一強状態に近いと考えられます。一方でその後、夏場以降は政策の順序や政策の解釈などの影響が大きくなり、米国およびグローバル経済の不確実性は高まるでしょう。ご存じのように、トランプ氏は、SNSなどでも政策に関する発言を積極的に行うタイプなので、その意味でも予測は困難です。25年のマーケットを語るうえで「不確実性」がキーワードになるのではないでしょうか。
――そんな中、日本の投資家が注目しておくべき経済指標やイベントはありますか。
米国の労働市場の指標、欧州の地政学リスクに関する情報などです。さらに中国の景気刺激策や地方政府における債務問題も要注目でしょう。
株式市場については一時的な値動きにとらわれる必要はありませんが、長期的なファンダメンタルズの実体経済に関連する動きは重要です。また、インフレを測る上で米国の住宅市場も注視すべきです。経済成長の強さを示す指標となる原油価格にも注目が必要でしょう。
◆これらの状況から25年はどんな地域・アセットに妙味があるのかについては<後編>