2025年、米国経済の見通しは?

2025年の市場は明らかにこれまでの景気サイクルとは異なった展開となるだろう。22年、23年と、日本以外の中央銀行はインフレ対策として利上げを行った。迎える25年は成長とインフレの状況がまだら模様となり、その差異によって金融政策、リスク資産の魅力度も変わってくる。

米国経済は今年(24年)夏ごろまではリセッション(景気後退)に突入するのではと見られていたが、年末が近づくにつれ景気や雇用の各種統計から比較的堅調であることは明らかだ。新規雇用も創出され、旺盛な消費も経済の堅調さを下支えしている。

コロナ禍の時期に積み上げられた貯蓄をほぼ使い切った米国の各世帯だが、消費性向はこれまでと変わり、より選択的となっている。24年末から25年の年初にかけて労働市場の堅調が維持されれば、個人消費の落ち込みもないというのが現在の想定だ。

アクサ・インベストメント・マネージャーズ コア・インベストメント最高投資責任者(CIO)
アジア担当 エカテリーナ・ビゴス氏
 

投資サイクルが再開、製造拠点の国内回帰が経済成長を支える

米国で注目すべき成長を支える要因は、政府がIRA法※、CHIPS法※※で信用力(資本)を提供したことにもある。これにより米国企業は拠点を米国に戻すリショアリングや、新規投資が可能になった。順調な個人消費に加えてこうした資金供給による多様な投資促進もプラス要因だ。

製造拠点、工場等のさらなる整備が進み、米国の設備投資は特に建設、産業用および輸送用機器等が23年比で大きく伸びている。製造業がさらに堅牢になれば、海外の製造拠点が米国内に回帰し、設備も最新化され製造業がより重要な位置を占めることにつながる可能性がある。

米国では高金利による資金調達コストの高まりを受け、企業は新たな借り入れを減らし、レバレッジを低く抑える行動をとったため、株式よりも債券に投資妙味がある状況だった。

一方で25年に向けては、好調な企業収益や新政権による成長促進策が追い風になると考えると、企業の信頼感が高まり、投資サイクルの再開が期待でき、米国経済を支える要因となるであろう。

※インフレ削減法…気候変動対策導入に対する税額控除
※※CHIPSプラス法…半導体産業支援に対する補助、助成