残る「インフレ再燃」リスク

一方でインフレが再燃するリスクは残っている。いまだFRB(米連邦準備理事会)が掲げる2%のインフレ目標に収束していない状況下、25年には新政権が税制優遇策、規制緩和、関税措置、移民政策を打ち出すことによって、インフレが再燃するリスクは残っている。経済成長の一方でインフレは高止まりするという非対称性のリスクが依然として存在することに注意すべきだ。

この点に関しては、金融緩和の動向が重要だ。金利が高止まりし、企業は融資や資金調達のレバレッジを低く抑えてきたため、株式よりも債券投資が有利だったとは前述したとおりだ。

一方で、足元では設備投資、研究開発費について再度レバレッジを上げようという機運が高まっている。ただ、これはFRBの金融緩和が続いて経済が正常化に向かうことが条件であり、そうでない場合は依然、リスクが残っている。

インフレ対策のタイミング、規模によってインパクトは変わってくる。トランプ氏が大統領選で公約に掲げた経済政策によって、25年半ばには政策金利3.5%に向けて調整されゆくだろうが、タイミングと規模によってはリスクになり得る。

2025年、欧州経済の見通しは?

米国との違いが見られるのが欧州だ。24年、ユーロ圏はリセッションの可能性もあったが、南欧周辺国は堅調な成長を見せた。それに対してドイツはウクライナという地政学的リスクを抱えた地域に近い影響もあり、エネルギー不足による産業の低迷が明確化した。自動車輸出も中国勢との対抗で厳しい状況だ。結果、ドイツはスタグフレーションのような状況にある。

好調な南欧と苦境のドイツ…それらの状況が相殺され、欧州全体の成長はそれほど芳しくないという状況が25年も続くだろう。

消費性向も米国と欧州圏とでは異なる。欧州では消費も盛り上がらず、世帯の貯蓄残高はコロナ前よりもむしろ上がっている。可処分所得は増加しているものの消費に回らない。一方米国は、コロナ時の貯蓄を使い果たしてもさらに消費は旺盛で、この点で欧米は大きく違う。もともとの欧州の貯蓄志向に加え、地政学的なリスク地域に近いこともあり消費に保守的となっているのだろう。

ECBは年央には中立レートに戻る

財政出動の余裕がある米国と比べて、ドイツを含めその余裕が限定的であることが欧州の難しさを表している。また、欧州では既に目標インフレを下回っているため、ECB(欧州中央銀行)は25年半ばには中立レートに戻る、つまりECBは毎回の理事会で利下げを行うと想定している。

このように地域ごとの経済成長はインフレの差によりまだら模様となることが予想されるため、投資家のアセットアロケーションの判断に影響があると言えるだろう。

これらの状況を鑑みて25年に向けてどんな地域・アセットに妙味があるか後編で解説する。

【後編】2025年、日本経済の見通しと魅力度の高いアセット、セクターは?