30年近く据え置かれたままの「103万円の壁」
「103万円の壁」とは、所得税がかからない年収上限のこと。そもそも所得税の計算上、すべての人に一律にある48万円の「基礎控除」と雇用されている人が受けられる55万円の「給与所得控除」がある。つまり年収が103万円以下であれば、控除額以下となるため、所得税は課せられないが、103万円を超えると控除額を超えるため、所得税が発生してしまう。ゆえに103万円の壁と言われているのだ。
税金を引かれると手取りが減るため、パートタイマーやアルバイトにとっては悩ましい問題である。「このままだと税金がかかっちゃう。来月のシフトを減らさないと」「本当はもっと働きたいのに」と時間調整に頭を悩ませる人も多いのでは。
年収を103万円以内に抑えようとすると起きるのが“働き控え”である。少子高齢化などを背景とした生産年齢人口の低下に伴う、人手不足の深刻化に悩まされている企業にとっても、頭の痛い問題だろう。
実は「103万円」という金額は1995年から変わっていない。一方で、この約30年で、日本の最低賃金は1.73倍になった。物価も上がっていることから103万円の壁については据え置かれるのはおかしい、引き上げる必要があるのでは、といった議論が続いてきた。
そうした中、2024年10月の衆議院選挙が行われた。結果は与党が大敗。与党側である自民党(191議席)、公明党(24議席)合計215議席で、過半数割れとなった。一方で、選挙前の約4倍の議席を確保して躍進したのが、基礎控除と給与所得控除の合計の「178万円への引き上げ」を公約に掲げる国民民主党だ。
自民・公明両党は、安定した政権運営を目指したいといった思惑もあってか、「年収103万円の壁」見直しを進める方向で11月20日に国民民主党と合意を結んだ。ただ、現状では具体的にどのような措置が取られるかまでは決まっておらず、今後、本格的な議論が進んでいくものと思われる。