おおむね歓迎ムードだが、社会保険に関する課題も

アンケートの数字だけに注目すれば、歓迎ムードが漂っているように見える。一方で「103万円の壁」の見直しを求めつつも、引き上げに対して懸念を示す声もちらほら見られた。目立つのは“社会保険料の負担”に関する指摘だ。

例えば、「社会保険料の106万円・130万円の壁もあるので、所得税のみの見直しでは働き控えはそれほど変わらない」(情報サービス)といった声が上がっている。

指摘のとおり、働き控えなどの問題をめぐっては、所得税に関わる「103万円の壁」だけではなく、社会保険料負担が発生する「106万円の壁」「130万円の壁」などの壁も立ちはだかるのが現状だ。

具体的には従業員数51人以上の企業で働く人の場合、年収が106万円以上、週の労働時間20時間以上などの壁を超えると、厚生年金と健康保険料の支払いが発生してしまう。これが「106万円の壁」だ。

従業員数が50人以下の企業ではこの基準が130万円に引き上げられている。こちらが1「130万円の壁」と呼ばれているわけだ。労働者からすれば、社会保険料の支払いによって手取り収入が減ってしまうため“働き控え”につながる恐れがある。問題の解消を目指すには、「106万円の壁」「130万円の壁」もセットで議論することが必要と言えるだろう。

「103万円の壁」の引き上げは、「もっと働きたいのに働けない」という働く側と、「人手が足りない」という企業にとって問題解決の突破口となりそうだが、一筋縄ではいきそうにない。常に最新情報をキャッチして動向を見守りながら、自身にとって最適な働き方を選択したいものだ。


《調査概要》 「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケート 調査期間:2024年11月8日〜2024年11月12日 有効回答企業数:1691社(インターネット調査) 調査機関:株式会社帝国データバンク