いつか訪れるのに、ついつい話し合いを先延ばしにしまいがちな「相続」。相続問題に詳しい弁護士の古山隼也氏は「相続には予想外のトラブルがつきもの」といいます。相続をきっかけに家族がバラバラになる「争族」にならないためにも、今回は相続に関するよくある疑問を、Q&A形式で古山氏に解説してもらいます。(全4回の1回目)
※本稿は、古山隼也著『弁護士だからわかる!できる! あんしん相続 手続きの「めんどくさい」「わからない」「ストレス」が消える!』(Gakken)の一部を抜粋・再編集したものです。
相続放棄で空き家の管理義務はどうなる?
Q. 不動産を受け継ぎたくなくて相続放棄したのですが、「空き家の管理が必要だ」と言われました。本当ですか?
A. 以前は空き家でも管理義務がありましたが、現在は管理義務はありません。
受け継ぎたくない不動産がある場合、相続放棄をすることでその不動産の相続を免れることができます。
相続放棄をした結果、後順位の相続人が相続すれば、その人が遺産である不動産を管理することになります。
では、もし後順位の相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄した場合はどうなるのでしょうか?
相続人がひとりもいない状態になるので、遺産は最終的に国庫へ帰属します。
しかし、それには家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任申し立てを行うことが必要で、費用がかかります(民法952条)。
遺産があれば遺産から出しますが、遺産が十分でない場合は、申立人が予納金(相続財産清算人の報酬となるお金)を自腹で納付しなければなりません。
そのため、誰も相続財産清算人の選任申し立てをしないまま不動産が放置される事態となってしまいます。
その場合の不動産(特に空き家)を誰が管理するのか、管理責任が問題となります。
以前は、相続放棄をしても、不動産を相続した後順位の相続人または相続財産管理人が財産の管理を始めるまでの間、相続放棄者がその不動産を管理しなければならないとされていました。
しかし、これではせっかく相続放棄をしても、相続による不利益を回避できたことになりません。