本連載ではFinasee読者から寄せられたさまざまな体験談をご紹介しています。今回のテーマは「ひとり親世帯の現状と課題」です。ひとり親世帯の平均年間収入は母親で272万円、父親で518万円と、特に母子家庭においては経済状況の厳しさが目立ちます(厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」2022年12月16日)。ひとり親世帯の抱える経済的課題は、結果的に子どもの教育格差や体験格差などにも影響を与えます。社会的なサポートや政策の充実に向け、まずは個人が現状を認識して関心を持ち続けることが重要です。本稿では2人の読者のエピソードをお届けします。

弱くなる地域のつながり、深まる母親の孤独

保健師として仕事をしていたくるまえびさんは、家庭への支援に取り組む中、母親が孤立しがちな現状に課題を感じるようになりました。最悪の事態を防ぐために、支援の現場ではどのような対策が望まれているのでしょうか?

<くるまえびさんプロフィール>

女性、20代、東海地方在住

<投稿エピソード>

「私は保健師の国家資格を持っており、発達障害児の支援や育てにくさを感じる親への支援、虐待が疑われる家庭への支援の仕事を以前していました。

それぞれの家庭によって抱えている事情は異なりますが、傾向として近くに支援者が少ない家庭はネグレクト傾向にあったり、母親が子育てをする上で病んでしまったりすることが多かったです。

私が支援していた地域は比較的田舎でしたが、核家族化が進み、近くに支援者(祖父母や頼れる友人等)がいない家庭が多く、子育てするにも孤立してしまう母親を数多く見てきました。プライバシー保護の観点からも田舎でさえ地域のつながりが弱くなっているように感じます。都会であればより問題が深刻であると思います。

以前私が関わった家庭では、シングルマザーの母親が子育てで周りに頼れる人がおらず、子どもを毎日幼稚園へ通わせることもできなくなり、家もごみ屋敷のような状態になってしまったことがありました。いわゆるネグレクトの状態です。

子どもには罪がないものの、それによって幼稚園でも友達が作りづらかったり、人とのかかわりが希薄なため発達が遅れたりするケースも見られます。

シングルマザーが自分の親と離れて子育てする状況は仕方ないかもしれませんが、地域全体で家庭を支えていったり、もう少し行政が家庭に介入できる体制が整えば、取り返しのつかない状態になる前に孤立する家庭を救えるかもしれないと感じました」

●ひとり親世帯の負担を軽減するためには、地域や行政のサポートだけではなく職場からの理解と協力も重要な要素となりそうです。後編【「毎日がサバイバルみたい」1人きりで仕事と育児に奮闘…シングルマザーが直面する厳しい現実】で詳説します。

※ご紹介している「」内のエピソードは原文に準拠しています