DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセット・ブレインズの標氏に解説していただきます。
※この記事は、2024年10月18日(金)に実施したWEBセミナー「最新DC 投信マーケット解説 2024年10月号」を記事化したものです。
――2024年7月~9月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。
まず、図1のグラフをご覧ください。こちらは過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。
図1 分類別累積パフォーマンス 拡大図表示
過去2年間でパフォーマンスが好調だったのは、緑色の外国株式型、オレンジ色の国内株式型となりました。
この2年間おおむね堅調に推移してきましたが、外国株式型では2024年8月に米国経済指標の下振れを受けて、大幅に下落しました。国内株式型も同様に日経平均株価が8月5日に過去最大の下落幅を記録するなど一時波乱の展開となりました。
日米の金利差縮小を見込んだ円高進行も加わり、外国株式の累積パフォーマンスも6月のピークより下落しています。
一方、足元9月以降では米国の景気後退懸念が弱まり、株価も復調傾向にありますので、今後の動向、特に米国の金融政策には注目が集まります。
他方、引き続き、国内債券、国内リートのパフォーマンスはマイナス圏に沈んでいます。
日銀はマイナス金利を解除するなど金融政策正常化へ向けた歩みを進めています。国内債券は相対的に低い利回りに加え、金利上昇が債券価格の下落につながることが懸念されています。
なお、国内リートは8月に株式相場が大幅下落した際も下げ幅が限定的でした。今後米国の金利低下が見込まれる中、外国人投資家は7月~9月に3カ月連続で買い越しとなるなど明るい材料もありますが、その他の買い手意欲が乏しくおおむね横ばいの値動きに留まっています。
次に分類別に直近3カ月のパフォーマンスランキング(図2)を確認します。
図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示
2024年7月にパフォーマンスが最も良かったのは外国REITでした。金利低下の見通しを受け、買い優勢となりました。一方、エマージング株式のリターンは最も小さくなりました。中国株式の下落が影響しました。
8月は、国内リートが1位となりました。米国の景気後退懸念や急激な円高を受け世界的に株式が調整する中、為替変動の影響を受けない国内リートや国内債券が底堅い動きとなりました。
9月はエマージング株式を始め、海外の幅広い資産が上昇しました。米国や中国において金融緩和的な姿勢がみられたことが安心感につながりました。一方、国内株式、国内リートは下落しました。自民党総裁選において金融引締めに前向きとみられていた石破氏が勝利したことで下落に転じました。
以上のとおり、8月上旬の調整局面では株式市場を中心に大幅に下落しましたが、その後は比較的早期に持ち直し、9月以降、米国の利下げ姿勢が鮮明となると、海外資産を中心に幅広い資産のリターンがプラスとなりました。
パフォーマンス動向の説明については以上です。