眠れないほどのかゆみ

ところが、数日たっても俊彦の発疹は治らず、むしろ増えていた。小さな赤い痕は腕だけでなく、足や背中にまで点々と広がっており、激しくかきむしったせいで、所々血がにじんでいた。俊彦本人の話では、特にかゆみがひどく、夜中に起きてしまうこともあるのだという。

「これはただの虫刺されじゃないわね……」

さすがに心配になった安美は、俊彦を近くの皮膚科へ連れて行った。そこで医師は、慎重に診察をした後、診断結果はダニによる発疹だと安美に告げた。

「え、ダニ……ですか?」

安美は驚きつつも、その言葉には思い当たる節があった。最近は台風や秋雨前線のせいで、家の中は常に湿っぽく、なんとなく不快な空気が漂っていた。もちろん掃除は毎日しているつもりだったが、湿気の多い時期は特に注意が必要で、水まわりはもちろんのこと、寝ているあいだに汗をかく布団や、椅子やソファのクッションなどにもダニが隠れていることが多いそうだ。医師の丁寧な説明を聞きながら、安美は家に帰るとすぐに家の掃除をすると決めた。