高くなる住宅価格への対抗策は? 

平成時代の「住まいの購入」に関する状況を一言でまとめるとすれば、「住宅価格はうなぎのぼり、さりとて所得は伸びず、ローン膨らむ」でしょうか。

住宅価格は上昇しているのに、買い手の懐具合は変わらず(もしくは寂しくなっている)とすれば、「住まいの購入」が家計のライフイベントのなかにおいて、より大きな比重を占めてきていることになります。

家計にとって「住まい購入」の比重が大きくなってくると、通常であれば、買い手が高額物件に手を出しにくくなるので、販売が鈍化し価格も適正化に転じる、という流れになります。

しかし、平成時代の日本においては、景気後退とデフレの長期化といった環境のもとで、歴史的な低金利水準(ゼロ金利水準)の継続や、経済対策としての住宅ローン控除(住宅ローン減税)が拡充されたことによって、通常は並び立たないはずの「住宅価格の上昇」と「住宅購入力の維持」が並立したと考えられます。

住まいの購入時には住宅ローンを組むことが一般的ですが、ローンの頭金は、現状、「ゼロもしくは1 割」が主流となっています。また、若い世代ではペアローン(共働き世帯で夫婦2 人ともローンを設定する借り方)の活用が増加中です。こういった行動は、「伸びない所得」のなかでの「住宅価格の高騰への対抗策」としてとらえることもできそうです。

住宅価格については、世界的なインフレと円安を背景とした原材料費の高騰や、国家的な賃上げ促進による人件費・建築費の上昇などにより、新築物件価格の高止まりが予想されています。

一方、ゼロ金利政策が解除されたことから、今後、国内経済におけるインフレや金利の上昇などが想定されるなかで、30~40歳代の「住まいの検討世代」は、「人生初めてのインフレ」や「人生初めての金利のある世界」を体験することになるでしょう。平成時代であれば「家を買いたくなったら(買える状況になったら)ローンを組んで買っておけばよい」というスタンスでも大きな問題はありませんでした。しかし、現在、住宅価格の上昇や金利の先高感など、取り巻く環境が複雑化してきているなかで、従前よりも「家の購入に踏み切れない」という悩みを抱えている世帯も増えてきているように思います。

こういった状況において、家計の長期的なプランを考えてみたことのある方であれば、「住宅を購入する(持ち家派)」か、「賃貸に住み続ける(賃貸派)」か、で悩んだ経験のない人のほうが少ないのではないでしょうか。

特にパートナーと一緒に暮らす、子どもが生まれる、など家族が増える際には「住まいはどうする?」「持ち家派か、賃貸派か」という問題が立ち現れてきます。この選択次第では、今後の家計のやり繰りにも大きな影響を及ぼしますので、軽々しく「あなたに任せたわ!」とはいえない問題です。

では、持ち家と賃貸の特徴を踏まえたうえで、住宅を選ぶ際のポイントを押さえていくことにしましょう。

第2回【持ち家 VS 賃貸、生涯かかる費用を比較! 結果に大きく影響を与える“変数”の存在にも注意を】では、持ち家と賃貸を、生涯でかかる費用、支出タイミング、特徴の角度から比較します(9月13日公開予定)。

 

「金利がある世界」の住まい、ローン、そして資産形成 今までの常識はこれからの非常識? 

 
 

 

 

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