住宅の購入、およびローンの組み方は資産形成のさなかにある人にとっては、老後資金計画に大きな影響を及ぼす重要なイベント。
それだけに、ちまたには住宅購入をめぐるたくさんの情報があふれていますが……人生100年時代を見据え、単に「住処」としてだけでなく、「資産」として活用していく視点や、平成から令和になって「常識」が変化している点も踏まえるべきだと、資産のミライ研究所 所長の丸岡知夫氏は指摘します。
全国1万人への連続5年間に及ぶアンケート調査の分析結果をもとに最適な「住宅ローン組成と資産形成作」の考え方を提示する、話題の書籍『「金利がある世界」の住まい、ローン、そして資産形成 今までの常識はこれからの非常識? 』より、特別に一部をご紹介します(全2回)。第1回では、住宅価格の状況を見ていきます。
※本稿は、丸岡知夫著『「金利がある世界」の住まい、ローン、そして資産形成 今までの常識はこれからの非常識? 』(金融財政事情研究会)の一部を抜粋・再編集したものです。
首都圏で「持ち家」は高嶺の花か?
不動産経済研究所によると首都圏の新築マンション価格は2021年、22年と2 年連続でバブル期(1990年)を上回り過去最高となりました。平均価格は22年が6,288万円と1990年を約3 %上回っています。
住まいの価格高騰は首都圏以外の地域にも広がってきています。株式会社東京カンテイによると、1 戸1 億円を超す「億ション」は2022年時点で東京都、大阪府、愛知県の合計で2,959戸、それ以外の道府県でも452戸あります。中古マンションの価格も2022年の首都圏平均は4,716万円となっていて、2 年連続で前年比10%超の値上がりとなっています。
価格面だけでは実態は掴めませんので、マンションの供給戸数もみてみます。不動産経済研究所の調べでは、2022年の全国新築供給は約7.3万戸と1990年比でほぼ半減しています。さらに立地の内訳をみると、東京23区など都心の割合が上昇しています。地方の億ションも大半は中核都市に限られています。全体の供給が減り、もともと高価格の都心の立地比率が高まれば当然、平均価格も上がることになります。
また、住宅金融支援機構の調査によると、2021年度のマンションの面積は平均で新築が64.7平方メートル、中古が68.2平方メートルでした。10 年前に比べ新築は10%、中古は5 %狭くなっています。原材料費の高騰もあり、不動産販売業者の間では「資材の品質を落とす動きも目につく」との声も聞かれます。価格を抑えるための調整の面もありますが、子育て世帯にとって「広い我が家」は「高嶺の花」になりつつあるのかもしれません。