注文・建売・マンションは「いずこも同じ秋の夕暮れ」? 

 では、こういった価格の高騰はマンションだけなのでしょうか。【図表1− 1 】は、平均的な住宅購入費用について、住宅金融支援機構の2021年の調べをまとめたものです。もともと住宅購入費用は首都圏が突出して高かったのですが、他のエリアでもここ数年、高騰してきており、その結果、全国平均で注文・建売・マンションの購入費用の水準は3,500万~4,500万円程度になってきています。

●図表1− 1 ​ 住宅購入費用

 

(注) 土地付注文住宅の購入費用は、建設費と土地取得費を合わせた金額。
(出所) 住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」をもとに三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

一方、国税庁が2023年に発表した「令和4 年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の平均年収は約458万円でしたので、住まいの購入費用は年収比で「8 ~10倍」になってきています。「値段が高くなった」という点でいえば、注文・建売・マンションといった形態にかかわらず、「いずこも同じ」という想いを抱かれる方が多いと思います。

住宅価格と家計所得からみた「平成」という時代

では、住宅価格はいきなり高騰したのでしょうか。また、買い手である個人の「家計所得」の推移(いわゆる懐具合)も気になるところです。おおよそ30年間の平成時代における「世帯所得」と「住宅価格の動向」を約10年ピッチで眺めてみたのが【図表1− 2】です。ここでは、住宅価格の代表選手として「首都圏における新築分譲マンションの1 戸あたり平均価格」に登場いただきましょう。

●図表1−2 平成年間の「世帯平均所得」と「新築分譲マンション価格」の推移

 

(注1 ) 厚生労働省公表の「国民生活基礎調査」のうち大規模調査年度のデータ。
(注2 ) ㈱不動産経済研究所発表の首都圏における新築分譲マンションの1 戸あたり平均価
格。なお、首都圏の範囲は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1 都3 県。
(出所) 注記の公表データをもとに三井住友トラスト・資産のミライ研究所が作成

1 世帯あたりの平均所得(年額)をみると2000年は616.9万円でしたが2018年は552.3万円と、金額で64.6万円、比率で約1 割減少しています。一方、首都圏の新築分譲マンションの1 戸あたり平均価格は、2000年に4,034万円だったものが、2018年は5,871万円と1,837万円も上昇しており、2000年比で1.46倍になっています。

この期間において、世の中の物価全体が上昇しているのであれば、その影響だと考えられるのですが、消費者物価の平成年間の動きをみると、消費者物価の上昇率は1998年から2013年の15年間のうち10年間はマイナスでした。全国消費者物価指数(1998年=100)は2013年に96.53まで低下します。2013年3 月、日本銀行の総裁に黒田東彦さんが就任し「超異次元金融緩和」をスタートさせたことを受け、2014年に2.7%の急上昇をみせましたが、その後はおおよそ0.3~0.8%程度の上昇で推移してきました。

こういった推移を比較してみると、「平成」は、世帯所得は伸びなかったものの、消費者物価が安定していたことで家計の逼迫感は緩和されていた時代だったといえます。

しかし、そんななかで、住宅価格は継続して上昇しています。これは家計に対して、どんな影響を及ぼしているのでしょうか?