投資の第一歩として「ありがとう」を言う

働くことを「ストレスと時間をお金に換えること」だと考え、会社を「ブラックなもの」「信用できないもの」としか考えられなくなれば、「会社なんて信用できない、大事なお金を投資するなんてもってのほか」と考えるのは自然な流れでしょう。

しかし30年ぶりのインフレに転換しつつある今、デフレ下で生じたこの強烈な負のスパイラルを何とかして止める必要があります。

そこで、今すぐできることとして皆さんにぜひやっていただきたいのが、「ありがとう」を言うことです。「えっ、なんでそんなことを!?」と意外に思う方も多いでしょう。でも、これにはしっかりした理由があります。

人は感謝されると自信を持ち、頑張ろうと思えるものです。仕事でたくさん「ありがとう」と言われる人は、働くことが好きになるでしょう。つまり皆さんが日々「ありがとう」を言うことが、「仕事が好き」「会社が好き」と思う人を増やし、さらに「頑張っている会社や人を応援したい」と投資にポジティブな人を増やすグッドスパイラルを起こしていくのです。たとえばコンビニのレジで会計をしたとき、店員さんに「ありがとう」と言ってみましょう。

職場でも、社内外の人に積極的に「ありがとう」を言ってみてください。もちろん家庭内でも「ありがとう」を増やしていきましょう。

私は、投資というのはお金を投じることだけでなく、自分が持つさまざまなエネルギーを投じることで未来からお返しをいただくことだと考えています。「ありがとう」を言うという行為も、よい社会をつくるための大切な「投資」です。「ありがとう」を言うことは、誰でも簡単にできてリスクもなく、コストもかかりませんから、マネー回避の傾向がある人も「投資の第一歩」として無理なく始められるのではないでしょうか。

「ありがとう」が生む大きなリターン

「ありがとうの投資」は、一見、遠回りだと感じるかもしれません。それでも、一人でも多くの人が「ありがとう」を増やすことは、社会によいスパイラルを生むために非常に大事だと思っています。ですから私は、大学の学生向けの講義でも、何十年も株式投資をしている個人投資家向けのセミナーでも、金融機関で商品を販売している人たちの研修の場でも、起業を目指す人たちや企業経営者への講話でも、機会があれば繰り返し「ありがとうを言いましょう」と言い続けてきました。

ありがたいことに、大学生はもちろん歴戦の個人投資家や金融機関のトップまで、属性を問わず多くの人が「『ありがとうの投資』の話が強く印象に残った」「ぜひやってみようと思った」といった感想を寄せてくれます。さらに、「ありがとうを言うようにしてよかった」という体験談を聞かせてもらえることも少なくありません。

先日、客員教授を務める広島の叡啓(えいけい)大学で講義を行った際、ある学生さんが手を挙げてこんな話をしてくれました。

「私は1年前に藤野さんの講義を聞いてから、いろいろな人にありがとうを言うように心掛けてきました。母にもありがとうを言うようにしたらとてもうれしそうで、機嫌がよくなったからか、晩ごはんのおかずが1品増えました」

また最近、福岡を訪問した際、ふくおかフィナンシャルグループ社長・福岡銀行頭取の五島久さんからは「藤野さんのセミナーを聞いてから、ありがとうを言うようにしたんです。そうしたら頭取になれたんですよ」と言っていただきました。

「ありがとう」と言われて嫌な顔をしたり怒ったりする人はいませんから、皆さんがいくらたくさん「ありがとう」を言っても、悪いことは一つも起きません。リスクゼロで意外に大きなリターンが見込める投資なので、ぜひ皆さんも実践していただければと思います。

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