純資産総額が1兆円を超える投資信託「ひふみ」シリーズ。独自の投資哲学と調査で、株価が何倍にも跳ね上がる成長株を数多く発掘し、人気を博してきました。現在、市況の変化に対応するために主力商品「ひふみ投信」(注1)は大型株の比率が高まっていますが、成長株を見つけるのは今も変わらずに「ひふみ」が得意とするところです。

そこで「ひふみ」最高投資責任者の藤野英人氏に、これからの日本を担うと期待している経営者たちを紹介してもらいます。(全3回の2回目)

●第1回:1兆円ファンド代表が「かけてみたい」と唸った…退屈だった日本の大企業を変える2人の社長との出会い

注1:直販での商品名は「ひふみ投信」、銀行や証券会社で扱うのは「ひふみプラス」、確定拠出年金専門では「ひふみ年金」。すべて「ひふみ投信マザーファンド」に投資しているため、投資方針、組入銘柄などは同じ。

※本稿は、藤野英人著『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)の一部を抜粋・再編集したものです。情報やデータなどは、書籍執筆時(2023年12月時点)に基づいています。

「ネクストジャパン」ど真ん中として注目したい4羽ガラス

これから大きく成長して次の日本を担うと期待する「ネクストジャパン」企業。そのなかで世代別に私が注目する経営者「4羽ガラス」がいます。

50~60代は、GMOペイメントゲートウェイ(銘柄コード3769)の相浦一成さん。40代は、SHIFT(シフト、同3697)の丹下大さん。30代は、M&A総研ホールディングス(同9552)の佐上峻作さん。20代は、ANYCOLOR(エニーカラー、同5032)の田角陸さんです。

彼らはいずれも経営者として馬力があり、過去の実績がすばらしいのはもちろん、これからの日本を変えていくかもしれないと感じさせる力も持っていると思います。

4羽ガラスの中でもっとも大きな実績を上げているのは、GMOペイメントゲートウェイの相浦さんです。彼は高校時代に花園に出場してベスト8まで進出した経験を持つラガーマンで、体力、気合、人としての迫力に満ち、緻密にものを考える力も併せ持っており、高い総合力のある経営者だと思います。

GMOペイメントゲートウェイは、インターネット決済処理サービス企業大手として知られています。時流に乗ったビジネスを展開しているのはもちろん、常に「有言実行」の相浦さんの強いリーダーシップのもと、2005年に当時の東証マザーズに上場して以降、営業利益25%成長の継続を掲げて高成長を続けているのです。おそらく同社は今後数年で時価総額1兆円を超え、「ザ・プライム」に移っていくのではないかと見ています。

40代ナンバーワン経営者は「IT業界のジャイアン」

SHIFTの丹下さんと出会ったのは、私が「ホリエモンロケット」と呼ばれるインターステラテクノロジズ社のロケットのスポンサーになったことがきっかけです。

「ホリエモンロケット」は2度にわたり打ち上げに失敗し、宇宙への到達に向けて背水の陣で臨んだのが3号機でした。その3号機でメインスポンサーになったのが私と丹下さんだったのです。このとき私は彼のことをあまりよく知らなかったのですが、3号機がついに宇宙に到達した際に名刺を交換し、「いつか会いましょう」という話になったのです。

そして改めて丹下さんに会ったとき、私は彼が日本の40代の経営者の中でほぼナンバーワンの能力を持っていると確信することになりました。丹下さんが創業したSHIFTはソフトウェアのテスト事業で急成長しているIT企業ですが、最終的にはSE総合サービス提供企業になるでしょう。おそらく5~10年後には、現在の野村総合研究所やNTTデータのような存在感を持つ企業に成長しているはずです。

丹下さんは雰囲気がジャイアンに似ています。ドラえもんに登場するジャイアンは腕力自慢でちょっと乱暴なイメージがありますが、本当のすごさは「巻き込み力」です。ジャイアンは、台風のようにチームを組成して人を巻き込み、プロジェクトを推し進めていきます。ここでいうプロジェクトとは、遊びかもしれませんし、ジャイアンリサイタルかもしれませんし、冒険かもしれません。いずれにしても、ドラえもんの世界はジャイアンがいるからこそ面白いのです。

その意味で丹下さんは「IT業界のジャイアン」だと私は思っていますし、非常に緻密にものを考えられる優れた経営者として尊敬しています。