若者の価値観に合った評価システムで人材を集めるM&A総研

30代の起業家の中でも今、私が注目しているのが、M&A総研の佐上さんです。

彼が創業したM&A総合研究所は2018年設立の非常に若い会社ですが、2022年に東証グロース市場に上場し、翌年には東証プライム市場に市場変更しており、時価総額はすでに2000億円を超えています。

M&A総研はM&Aの仲介を手掛ける会社です。そのすごさは、日本でトップクラスの20代の人材を集めているところにあります。M&A総研では1億円の年収をもらう社員が何人もいるのですが、これほど人手不足が顕著で採用が難しい時代にあって若手の優秀な人材が吸い寄せられるように集まるのは、年収額だけが理由ではありません。

同社の強みを知るカギは、今の20代の価値観にあります。基本的にお金だけで動くことがなく、「意味のあることをしたい」「合理的なことをしたい」と考えるのが20代の傾向です。

この点、M&A総研では「どうすれば給料が増えるか」の要件が明確化されています。

シニア世代はどうしても「頑張れば報われるものだ」などと言ってしまいがちなものですが、同社では何件のアポを取り、そこからどのくらいの打率で成約するか、M&Aを実施した企業からの評価がどれくらいだったか等の条件によって計算式が決まっており、そのとおりに給料が決まるのです。

さらにすばらしいのは、成功した社員がノウハウを社内に開示すればするほど給料が高くなる仕組みを導入していることです。動画でノウハウを共有したり、成功したポイントを紹介したりすることが評価の対象になっているので、社員が個人プレーに走ることなくノウハウが蓄積されていきますし、その仕組みの中で社員は成長していくことができます。

このように若い世代に納得感のある仕事の場や社内システムをつくり、実際にハイレベルな人材を集めることに成功しているのが同社の強みであり、佐上さんのすごいところです。就職人気ランキングが高く待遇もトップクラスの企業から、社会人1~6年目くらいの人たちが次々に転職してきており、新卒採用も順調です。

佐上さんは30代前半ですから、経営者として今後の伸びしろも大きいと思います。M&Aの仲介という業態についても、日本企業の99%を占める中小企業の多くが後継者不足に悩む中、事業を継続するための選択肢としてこれからM&Aが増加していく可能性は高く、事業環境は良好と言えるでしょう。その上、若者の価値観の変化を的確にとらえ、未曾有の人手不足の中で最高の人材を集めることに成功しているのですから、この先が非常に楽しみです。

「10年後のエンタメの覇者」の可能性を持つ20代経営者

20代の経営者でもっとも注目しているANYCOLORの田角さんは、早稲田大学在学中の2017年に21歳で起業し、2022年に東証グロース市場に上場しました。彼はエンターテインメント(エンタメ)の未来を見据えるビジョナリーであり、先に紹介した3人の経営者に比べるとアート志向が強いように感じます。

ANYCOLORはバーチャルなキャラクターを使ってライブ配信や動画投稿等を行うVTuberグループ「にじさんじ」を運営する会社で、日本でもっとも多くのVTuberを集めているのですが、私はVTuberは「テレビ局や大手広告代理店等とのしがらみがない」のがよいところだと思っています。

2023年に旧ジャニーズ事務所の性加害問題が明るみに出ましたが、もともと芸能界で性被害が多発していることは多くの人が耳にしていた話です。不健全な世界の中に一部、輝いて見えるところがあったというのが旧来の芸能界だったと言えます。

そのような古くからの根深い問題が発覚する一方、新しいエンタメの形として登場したのがVTuberであり、その市場で急成長を遂げているのがANYCOLORというわけです。

これからデジタル技術を活用したエンタメが増えていくであろうことを考えると、VTuberそのものが今後も成長を続けるかどうかはさておき、私は旧来の芸能事務所や大手広告代理店、テレビ局などとはまったく異なる健全なエンタメの枠組みができていくのではないかと期待しています。そして新しい枠組みができる過程で、田角さんがデジタルにおけるエンタメ業界の覇者になる可能性があると思っています。

ANYCOLORの第2位の株主としてソニー・ミュージックソリューションズが名を連ねているのは、同じような期待を持つ人がいるからでしょう。もちろん、ここで紹介した「4羽ガラス」が全員、10年後に成功しているとは限りません。しかし、彼らのように未来志向を持ち、成長性のある分野でリーダーシップを発揮し、有言実行でリスクを取ってビジネスに挑む人たちを中心に未来がつくられていくことについては確信がありますし、「ネクストジャパン」の中核として投資をしていきたいと思っています。

※本稿では、個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。またファンドへの組み入れをお約束するものではありません。

●第3回は【日本人から仕事の魅力や自己研鑽を奪ったのはデフレだった⁉ 負のスパイラルから抜け出すための言葉とは?】です(8月20日に配信予定)。

「日経平均10万円」時代が来る!

 

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