インフレ率を加味したとしても、悲観的になる必要はない

数字だけを見ると、なかなか悲観的な気持ちになるシミュレーションですが、そんなに悲観的になることもないのではないか、というのが正直なところです。

まず、年3.5%のインフレ率が恒常化するとは考えにくいことです。消費者物価指数は確かに今、高めで推移しています。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)の前年同月比は、昨年の4~10月までは年4%以上でしたが、そこから徐々に低下して、2024年4月の数字は年2.4%です。

このようにインフレ率は、その時々の経済情勢を反映して上下します。確かに今は、世界経済の情勢、円安、人手不足などによって物価には上昇圧力がかかっていますが、世界経済の情勢や円安がこのまま持続するかどうかは何とも言えませんし、人手不足の問題は生産性向上によって解決に向かう可能性もあります。

また、消費者物価指数を指数で見た時、2000年1月のそれは100.3ですが、それから30年前の1970年1月時点では30.3でした。この30年間で、消費者物価指数は3倍超にも上昇していますが、1970年当時30歳だった人たちが、2000年に老後を迎えるにあたり、絶望的なまでに貧困化したかというと、案外そうでもないのではないかと思うのです。

確かに現在の収入レベルで考えると、4000万円の不足を埋めるだけの金融資産を築くのはいささか大変そうに感じると思うのですが、物価上昇分を全額をカバーするのは難しいとしても、ある程度は物価上昇分を加味して給料も増額されると考えられますし、時間の経過にともない、人間は周りの環境になじんでいきます。案外、20年後の4000万円問題は、今で言うところの2000万円問題程度の受け止め方になるのではないでしょうか。