コーポレートガバナンスの“形”は浸透、“実質”を伴わせる次のフェーズへ
――日本株の注目度が高まっています。東京証券取引所(以下、東証)はコーポレートガバナンス・コード(以下、CG コード)の策定と2度の改訂、市場区分見直しと重要かつ具体的な施策でリードしてきたと思われます。まず、CG コード改訂の手ごたえやこの先の課題をお聞かせください。
2015年に初めてCGコードを策定して以降、企業のガバナンスは大きく進展したと思います。具体的には、独立社外取締役の選任や指名委員会・報酬委員会の設置、女性取締役の登用などが進展しました。とりわけ、3分の1以上の独立社外取締役を選任している上場企業の比率は、2014年では旧市場第一部のわずか6.4%の状況から2023年にはプライム市場の95%まで大幅に上昇しています。
このように、ガバナンスは“形”としてはかなり整ってきましたが、今後は“実質”を伴わせていくフェーズだと考えています。コードは2018年、2021年に改訂があったため、3年に1度改訂するものと思われている方もいますが、決して改訂ありきではありません。コードという“仕掛け”を使って、本来の目的である「成長するための自律的な対応」がいかに進むかが重要です。
――枠組みが根付いたからこそ新しいフェーズにいける、ということですね。市場区分見直しについてはいかがですか?
市場区分は2022年4月に再編しました(図)。もっとも、見直したからといってすぐに何かが大きく変わるといったものではなく、中長期的な目線で上場会社の企業価値を向上させていくための環境づくりの第一歩と捉えています。
再編直後は、市場第一部からプライム市場に変わったことで「どれくらい上場企業数が減るのか」が注目されましたが、当初から再三申し上げているとおり、東証としては上場企業数を減らすことが目的ではありません。見直しを皮切りに、それぞれの市場区分で、投資家の期待に応え、企業価値を向上していく企業が1社でも増えていくような市場環境を構築していきたいと考えています。
具体的な仕掛けは2022年7月から1~2カ月に1回のペースで「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」を開き、検討を進めています。
図 東証市場区分の見直し
――フォローアップ会議は今年1月までに計14 回開催されています。重要視している論点はなんですか。
最大のテーマである「企業価値向上の促進」に向け、①資本コストや株価を意識した経営の要請、②ガバナンスの質の向上、③英文でのディスクロージャーの推進、④投資家との対話の促進といった論点が上がっています。論点と施策案は2023年1月の段階で洗い出しており、現在は各施策を実行するフェーズに入っています。例えば最も重要な取り組みとして位置づけている①資本コストや株価を意識した経営については、プライム市場とスタンダード市場の全上場会社へ昨年3月に要請をしており、③英文での情報開示に関しては今年2月に新制度の概要を示しています。