東京エレクトロンの株価が好調です。日経平均株価がバブル後で最高値を記録し、代表的な値がさ株である東京エレクトロンにも買いが集まりました。生成AIなどで注目を集める半導体関連企業であることも投資家の関心を呼んでいると考えられます。
【東京エレクトロンの業績】
売上高 | 純利益 | |
2022年3月期 | 2兆0038億円 | 4371億円 |
2023年3月期 | 2兆2090億円 | 4716億円 |
2024年3月期(予想) | 1兆8300億円 | 3400億円 |
※2023年3月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想
出所:東京エレクトロン 決算短信
東京エレクトロンは収益力の高さと投資家の人気が強みの企業です。2023年7月から算出される「JPXプライム150指数」の構成銘柄は資本収益性と市場評価性のいずれかを満たして選ばれますが、東京エレクトロンは双方を満たし選出されました。
東京エレクトロンは2024年3月期に4期ぶりの減収減益を見込んでいます。しかし翌期は回復する見通しもあり、株価も好調です。東京エレクトロンの概要と足元の業績、また2026年度までの中期経営計画を押さえましょう。
半導体製造装置で世界級 60周年で記念配
東京エレクトロンは半導体製造装置の大手です。ロジック(CPUなど)やメモリといった半導体製品を作るための装置を手掛けています。主な顧客にインテルやTSMC、サムスンなどが挙げられます。
東京エレクトロンはもともと専門商社でした。1963年の設立当初は装置の輸入販売を行っていました。その後、国産化に乗り出し事業を拡大します。2023年3月期は設立60周年を祝い記念配当が株主に支払われました。
【1株あたり配当金の推移(2017年3月期~2023年3月期)】
東京エレクトロンは主に前工程(※)で用いられる製品で高いシェアを獲得しています。例えばコータ/デベロッパ装置(※)は世界シェアの8割以上です。うち先端半導体の製造に用いるEUV(極端紫外線)露光用では市場のシェアを独占しているとみられます。
※前工程:半導体製品の製造工程の前半部分。主にICチップ製造までの工程を指す(参考:日本半導体製造装置協会 半導体のできるまで)
※コータ/デベロッパ装置:ウェーハ上に感光材を塗布するコータ工程と、露光後のウェーハ上に回路パターンを形成するデベロッパ(現像)工程を一連に行う装置
【東京エレクトロンのシェア(2021年)】
世界シェア | 世界順位 | |
コータ/デベロッパ | 84.1% | 1位 |
成膜装置(CVD) | 14.0% | 3位 |
エッチング装置 | 25.3% | 2位 |
洗浄装置(枚葉式) | 22.0% | 3位 |
熱処理装置 | 23.2% | 2位 |
世界シェアの高さから東京エレクトロンは海外売上高比率も高く、2023年3月期は89.1%に達しました。
海外の比率が高いと一般に為替の影響が大きくなります。しかし東京エレクトロンの主力製品の輸出は原則として円建てで行われます。為替が変動しても利益が比較的安定しやすい点は東京エレクトロンの強みです。
ただし間接的な影響は残ります。円安になれば現地通貨に換算して価格が下落することになり価格競争力が強まります。一方、円高になれば相対的に値上がりすることになり、競争上不利になります。