図表5の左側は、主に資産形成層などが資産全体の7割を株式(株式100%の投信を含む)で持つことを考えているケースです。株以外の資産は預貯金や個人向け国債で保有します。長期運用であるイデコや企業型DCに全体の2割を拠出する場合、100%株式でよいと思います。残り5割をNISAで株式で保有すると株式は合計7割。残り3割の預貯金や個人向け国債は課税口座で保有します。非課税で運用できるDCやNISAは、大きく増えやすい株式を優先的に充てるという考え方です。

ところが実際には、DCでは平均的に資産の4割程度が預貯金など元本確保型です。NISAでも債券中心のバランス型投信で運用している人は多くいます。

ついついDCやNISAのなかだけで株とその他資産の配分を完結させてしまいがちだからです。しかも、会社で実施しているDCなどの研修教育でも、DCの資産のなかだけで株や債券の比率を考えるような教育も非常に多くみられ、不合理です。

これはどうも、DCの導入元である米国で、DCの資産の多くをターゲット・デート・ファンド(TDF)などバランス型投信などが占めていることをそのまま研修教育の参考にしているからだと見受けられます。

しかし、米国の401kの年の上限額は900万円強。これほど高額であれば、全額株式はリスクが大きすぎるので、債券も組み入れて変動を抑えるのが当然です。一方で日本は、DBのない会社でも年66万円にすぎず、文字通りケタが違います。こういう少額であれば全額株式でも資産全体の変動はたいしたことになりません。全額株式でいいと思います。

NISAでも、長期運用であれば全額株式で大丈夫でしょう。課税口座の預貯金3割も含めた資産全体でみれば、資産全体を株だけにするよりも値動きは抑えられます。

中高年以降で資産全体の値動きをもっと抑えたい場合はどうでしょう。図表5の右側の図のように、例えば株式の比率を4割程度にしたい場合、同じような考え方で株式をイデコや企業型DC→NISAの順にはめ込んでいけばいいと思います。

「株式は非課税で運用できる口座に優先的に充てる」というアセット・ロケーション(資産の置き場)の考え方を基に、アセット・アロケーション(資産配分)は課税口座も含めた資産全体で考えることが大事です。

【間違い】
NISAやイデコの口座のなかだけで資産配分を考える

●第3回【資産の目減りを回避…取り崩しは「定額ではなく定率」が圧倒的におすすめといえるワケ】では、NISAやイデコの取り崩しについて解説します(3月1日公開予定)。

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