成長の原動力は積極投資 リスクは?
SHIFTの強い成長はM&Aが支えてきました。積極的な買収を展開しており、連結子会社は3社(2014年8月)から36社(2023年8月)にまで増加しました。採用を強化してきたこともあり、グループ従業員は足元で1万人を超えています。
【従業員の推移(連結、2016年8月期~2023年8月期)】
積極的な投資はリスクもはらんでいます。その一つが「のれん」です。被買収企業の想定収益から買収額に上乗せされたプレミアムのことで、買収側の資産に計上されます。
ただし想定した収益が見込めないと判明したとき、のれんの取り崩し(減損)が生じます。これは損失として利益を圧迫する要因となります。例えばSHIFTは2019年に取得したアッションについて、2021年8月期に2億円の減損損失を計上しました(出所:SHIFT 有価証券報告書)。
買収を繰り返したSHIFTは総資産のおよそ2割をのれんが占めています。本業の利益を示す営業利益は順調に増加していることから、現状はM&Aがうまく収益につながっているようです。しかし取得企業が増えれば、中には採算の合わない案件も出てくるかもしれません。減損リスクには注意したいところです。
【のれんの推移(2016年8月期~2023年8月期)】
【営業利益の推移(2016年8月期~2023年8月期)】
もう一つのリスクは財務の悪化です。冒頭に紹介した2024年8月期第1四半期の決算では、2024年1月にM&A費用として60億円の借り入れを行うことが明かされました。また本社移転費用として35億円の融資を受ける計画も明らかになっています(出所:SHIFT 決算短信)。
SHIFTの負債は2023年11月末で228億円でした。計95億円の借り入れは同社にとって小さくありません。キャッシュフローは安定しているためすぐに倒産という事態は考えにくいですが、金融費用の増加から利益の圧迫が懸念されます。
またSHIFTは増資も検討しているようです。2023年8月期の決算説明会において、M&Aの原資として融資のほかに希薄化率10%程度までの増資を挙げました。増資は1株あたりの価値の減少を招くため一般に株価の下落要因です(出所:SHIFT 決算説明資料)。
SHIFTは2030年度までに売上高3000億円を目指しており、その施策としてM&Aの加速を挙げました。当面はこれらのリスクは意識されそうです。