米国では高齢者もリスク選好型

同レポートでもう1つ注目したい点は、日米の家計金融資産の比較において、米国も日本と同様、家計金融資産が高齢者世帯に集中しているということです。

ただ、大きく異なるのがリスク選好の度合いです。端的に言えば、米国の場合、高齢者になってもリスク選好的であり、日本の高齢者はリスク回避的であると、同レポートも指摘しています。

そして、その理由を、「米国では個人退職勘定(IRA)や企業型確定拠出年金の存在であり、かつ米国の確定拠出年金では、加入者の運用指図がなかった場合のデフォルト・オプションから元本確保型商品が除外されている」としています。

では、この手の仕組み・制度を整備すれば、日本の家計金融資産を、リスク回避型からリスク選好型に変えることができるのでしょうか。

同レポートでは、「日米の家計金融資産構成の違いは、米国における確定拠出年金のような政策の違いのみで説明できるものではない」と指摘しています。その要因の1つとして、米国は日本に比べて富が極端に偏在していることを挙げています。

なぜなら、資産を多く保有している人ほど、リスク資産の多いポートフォリオを持ち、資産が少ないほど安定資産を保有する傾向があるから、ということですが、加えてもう1つ、日本は戦後、高度経済成長期やバブル経済、デフレ経済という歴史の中で、長いことリスク資産で運用しなくても、物価高騰によって資産価値が極端に目減りするという状況に直面して来なかったからです。

高度経済成長期からバブル経済にかけては、賃金が右肩上がりで、地価の値上がりで持ち家の資産価値が増え、金利も物価水準を上回る程度にはありました。

バブルが崩壊してからは、確かに賃金が増えなくなり、金利も大きく下がりましたが、長期間にわたって物価が下がり続けたので、わざわざリスクを冒してまで株式や投資信託などのリスク性金融商品を買わなくても済んだ、とも考えられます。