あまりにも大きい乖離……なぜ起きた?

誤差と言うにはあまりにも大きすぎる乖離です。

もちろん、これだけの乖離が生じている理由はあります。同レポートでも記述されていますが、「世帯主の年齢階級別家計金融資産」の額は、「全国家計構造調査」という標本調査をベースにしているため、サンプリングの関係から一定の誤差が生じるのは避けられないことに加え、「アンケート調査であることから、通常家計が金融資産として認識しているような資産が計上されることも想定される」ということです。

対して日銀の資金循環統計には、「①通常個人が必ずしも金融資産とは認識していない金融商品、②個人事業主(個人企業)の事業性資金、なども家計金融資産に含まれており、割り引いて考えた方が良い点があるのも事実」とも指摘されています。

ここで言う「通常個人が必ずしも金融資産とは認識していない金融商品」とは、企業年金・国民年金基金等に関する年金受益権、預け金(ゴルフ場預託金等)、未収・未払い金(預貯金の経過利子等)などとなっています。

確かに、年金受益権のように遠い未来に受け取れる年金の権利などは、現時点の個人が自由に使えるものではありませんし、ゴルフ場の預託金を、預貯金などの金融資産として認識している個人は少数でしょう。

また、「個人事業主(個人企業)の事業性資金」も、実際に個人事業主として仕事をしている人なら実感できると思いますが、この手の資金は個人金融資産にカウントされているとはいえ、あくまでも個人が事業を行うのに使われる資金です。生活費やレジャー資金などのために自由に下ろして使える性質のものではありません。

しかし、それも個人金融資産に含まれているのです。

恐らく、大半の人は「個人金融資産」の概念を、まさに今、お金を預けている預貯金のように、必要に応じて自由に下ろして使える金融商品のイメージで捉えているでしょう。そこに「自由に下ろして使うことのできない資金」が含まれているとしたら、本当に2121兆円の個人金融資産の総額が、どこまで自由に使えるお金なのか、いささか疑わしくなってきます。

つまり、2121兆円という数字をうのみにすることなく、ある程度、割り引いて考えた方が良い、ということになるのです。